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薬の種類が多い、あるいは薬によって服用時点がマチマチのがあると、コンプライアンスが低下してくるので、それを防ぐために一包化することがよくありま す。

コンプライアンスを上げるために一包化にしたにも拘らず、一包化にしたことで逆にコンプライアンスが低下してしまいました。

その理由を聞き出そうとす る薬剤師の話し方に注目してみました。

問題の患者;Rさん 女性 75歳の資料

  1. 約一年前から大体、同じ処方が続いている。A薬局に来るのは2回目。
  2. 肝機能障害で半年間の入院。その後、他の薬局で薬をもらっていました。
  3. 前回、初めて来局した時の家族の話;それまでの薬局では一包化ではなかったけれど、薬の種類も多く、飲み間違いが多いようなので一包化にしてほしい

Rさんに対応したのは3年目の薬剤師D子

Rさんの前回の薬歴簿を読み込み、コンプライアンスが上がったはずと思いながら、Rさんに声をかけました。

「お待たせしましたね。前回と同じように、今回のお薬も朝、昼、夜、其々、一つの袋に入れてありますからね。前回からお薬も随分、飲み易くなりましたでしょうか?」

「いや、それがね、袋に入った薬を一気に飲むのは大丈夫? 何か、恐ろしくて飲んだり飲まなかったりなのよ」

「Rさん、どうしてそのようにお思いになられたのでしょうか?」

「今まで、1つ1つ飲んでいたのを、まとめてパックにされてしまうと、どの薬が何の薬だったのかわからなくなってしまい、不安になってね、それで……」

「このお薬は今のRさんにとってどれも大切なお薬なんですね、今迄は薬の種類が多く、1つ1つ確認しながらお薬を飲んでいかなくてはいけなかったから大変だったでしょう。前回からはそういう手間を無くして、飲み間違いもないようにしたんです。これだと、お口に入れるのも一回ですみますから、便利です」

Rさん、薬剤師に捲し立てられ、黙り込んでしまいました

さて、薬剤師の話し方のどこに問題が?

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患者さんから薬を飲んでいないと言われ、つい目を吊り上げてしまった薬剤師。ま

してや、コンプライアンスを上げるために前回から、時間をかけて一包化にしています。

せっかく飲み間違わないように細心の注意をして一包化したのに……。

 

このような思いをつい患者さんにぶつけてしまったようですね。

薬剤師の言葉が、患者さんとのコミュニケーションを遮断してしまった……。これはよくある典型的なパターンです。

このような場合、「飲んでいない」という患者さんの言葉に過剰反応せず、患者さんが飲みたくない本当の理由を上手に引き出す、これがコミュニケーションのポウントです。

では、どういう話し方がいい?

まずは、患者さんの言葉に共感したあと、飲まなかった理由を聞き出します。

薬剤師の模範的な話し方

Rさんが「一つの袋に全部入れてしまうと、どの薬が何の薬だったのかわからなくなる」と話した箇所から模範的な会話の進め方を紹介します。

「たしかに、パックにされてしまうと、どの薬が何の薬かわからなくなりますよね。

「そうなんですよ。ゴチャゴチャになっていて」

「もしかして、それが心配で飲めなかったんじゃあないですか?」

「そうなんですよ」

★★★「この袋の中にRさんが不安になってしまう薬が入ってるんですね。どんな薬だったか、わかりますか?」

「はい。むくみをとってくれるお薬が確か、入っているはずなんですが?」

「確かにありますね。ダイアート(一般名;アゾセミド)とアルダクトンA(一般名;スピロノラクトン)、この二つの薬がむくみをとります。これらの薬のどのような点がご心配なんでしょうか?」

「この薬を飲むと、たくさん、おしっこが出てしまうんです。朝から外出すると、すぐトイレに行きたくなるから常にトイレを探しているの。だから、午前中、外出する時は

この薬は飲まないようにしてるの」

「そうだったんですか。外で度々、トイレを探すのは本当に大変ですよね」

「そうなんですよ」

「このダイアートとアルダクトンAを飲むと、おしっこの量が増えてしまいます。この二つのお薬だけ、別の袋に入れましょう。どうしましょうか? このお薬がわかりやすいように袋に線も引っ張っておきましょうか? それだとわかりやすく、間違うことがないですよ」

「そうですね。そうしてください」

ということで、ダイアートとアルダクトンは別包に入れ直し、線を引っ張ってからRさんに見せました。

「これなら、わかりやすいわ」

「朝、外に出られる時は飲まずに、昼、帰られたら忘れずに飲んでくださいね」

「わかりました、実はね」

「何でしょうか?」

「一年前、薬を自分の勝手で止めちゃって、具合が悪くなり、入院したことがあるの」

「それは大変な思いをされましたね。これからも、何かお困りのことがあれば、いつでもご相談くださいね」

Rさんが帰られた後、薬剤師はダイアートトアルダクトンAを別包にしたことを医師にFAXで伝えました。

解説

今回の例は、一包化はコンプライアンスを上げるものと思い込むことは間違っているという事例でした。

これらは、患者さんとコミュニケーションのとり方次第で、解決できるものです。

薬剤師の腕の見せ所と言えるでしょう。

(上記の★★★の質問の仕方を「閉じた質問」と云います)

「閉じた質問」というのは、カウンセリング技法の1つです。特定の情報が欲しい時にする質問の技法です。

この質問の技法を薬局で使うなら、どんな使い方がいいでしょうか?

薬剤師が自分で仮説を作り、患者さんに対して事実確認をする時に使うと、便利です。あまり話してくれない患者さんから情報を聞き出す時も有効な手段です。

 

この閉じた質問の欠点、注意点

「閉じた質問」ばかりをし続けると、患者さんに冷たい印象を与え、誘導的な感じにもなります。

注意点は質問に質問を重ねてしまわないように、患者さんの答えを確認しながら、コミュニケーションをとっていくことが大切です。

 

薬剤師にとってコミュニケーションのスキルは、非常に重要なものです。

服薬指導の時、いかにして患者さんから多くの情報を引き出すことができるかは非常に重要なスキルです。

医学薬学のテキスト、情報誌に加え、カウンセリング関係の書籍にも関心を持って、薬剤師の幅を広げたいものです。