近年、ドラッグストアや薬局の目薬コーナーを見ると、色んなメーカーが中高年用の目薬を出しています。
OTC医薬品の中での目薬は、充血、疲れ目などの症状を緩和する「一般用」、コンタクトレンズ装着時に使用する「コンタクトレンズ用」中高年用の加齢などが原因で起こる疲れ目などに合わせた「中高年用」、目やに、軽いものもらいなどに使用する「抗菌用」などのカテゴリーに分けられます。
その中で、これからメーカーが力を入れて売って行こうとするものは、主に他の目薬に比べて高価格の「中高年用」です。
その理由として、高齢者の入り口にいる中高年者の目薬の需要性が、高まっているからです。この年齢層はスマホやパソコンも使える世代です。それらのIT機器による目の疲労が、メーカーにとっての狙い目ということです。
こういう状況の中で、中高年にターゲットを絞ってつくられたようです。
中高年の目のトラブルとは?
老眼鏡をかけるほどではないにしても、夕方になると、字が見えにくい、目が疲れるといった症状に悩まされています。これは、ピント調整能力の衰えです。
そしてもう一つ、涙液の減少です。50代の涙の量は20代に比べ、約4割、減少しているという報告があります。
角膜を保護している涙は、3つの層から減少しています。外側は薄い油の被膜「油層」。中心が「水層」。最も内側、角膜に近いのが、ネバネバとした水溶性の高分子である「ムチン層」。ムチンは結膜内で作られるのですが、加齢によって、減少していきます。
ムチンが減少すると、角膜表面に涙が付着できなくなります。そのため、角膜が傷つきやすくなってしまいます。それが目の疲れなどの様々なトラブルの原因になります。
中高年用目薬にビタミンAを入れている理由
ビタミンAは、鳥目と言われる夜盲症に効果があるとされています。また、ビタミンAには、ムチンを産生する杯細胞の再生を促す働きがあるといわれるようになりました。
動物実験で行った粘膜上皮細胞での評価を見ると、杯細胞の数を減らした結膜にビタミンA配合の目薬を一週間、点眼すると、杯細胞が再生されて、ムチンが増加したという報告がありました。
また、ビタミンAは、角膜上皮細胞の成長を促進させるヒアルロン酸を少しずつ増やしていくことがわかってきました。
ヒアルロン酸は、分子量が大きい物質です。そのため、体外から取り入れても、吸収されにくいのですが、ビタミンAによって体内でつくられたヒアルロン酸は親和性、吸収性の点で優れています。
目薬にビタミンAを配合するには高い技術が必要
ビタミンAを配合した目薬を作ったのは、スマイルのみです(2014~2015)。ビタミンAは脂溶性です。
非常に酸化されやすく、水溶性の薬液中では、安定化に保つことが非常にむつかしいわけです。
この問題点をスマイルシリーズを作っているライオンは、界面活性剤の効能を使って、解決しました。
ビタミンAの濃度だけを上昇させるのであれば、そんなに難しくはないのですが、ビタミンAの濃度を高めるのであれば、界面活性剤の量も上げていかなくてはいけません。
ところが、界面活性剤を増やしすぎると、ビタミンAが角膜にくっつこうとするのを邪魔します。
そこで、ライオンは製造条件を変えてみたり、技術を考案したりするなどして少ない界面活性剤でも、安定していて、角膜への吸着性が高い「吸着性ビタミンA」を作ることに成功しました。
ただ、添加剤である界面活性剤などに対して、あまりよくないイメージを抱いている人も多いです。
しかし、医薬品として使用できる界面活性剤は、安定性が確立されています。また、使用量も決められており、化学的に問題はないといえます。
マヨネーズ等の食材料や化粧品などにも使用されており、私たち現代の生活において、界面活性剤がなければ、作れないものがたくさん、あります。
まとめ
40代以降で目薬を購入する人たちは、目に良い成分が入っている目薬を求められることがライオンの調べでわかっています。
ぜひ、薬剤師や登録販売者と相談して購入されることをお勧めします。