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偽造処方箋を使って向精神薬を薬局からだまし摂る手口が増えています。

病院から向精神薬を正規に処方されている患者が、その処方箋に手を加えて持ち込む場合が多いようです。

一見しただけでは偽造処方箋と見抜くのは難しいと言われています。

向精神薬の処方箋を受けた場合、発行した病院が遠すぎるなど、少しでも疑問を感じたら、必ず疑義照会をしましょう。

偽造処方箋の事例

今回は患者さんが、持参された処方箋が偽造された者とは気づかずに調剤を行い。患者さんに渡し、薬剤を詐取された事例です。

何故、偽造処方箋とわかったのでしょうか?

偽造処方箋を持ってこられた時間帯は閉店間際で、薬剤師は忙しさに追われ、偽造処方箋とは気が付かずに調剤し、その患者さんに薬を渡してしまいました。

閉局後、本日応需した処方箋の整理をしていた別の薬剤師が偽造処方箋似気付きました。

偽造処方箋はコピーだったのです。印字をコピーした時の独特な光沢がみられました。

また、偽造処方箋の下部に印刷された医療機関の名前の一部が欠けていました。これでもコピーということがわかります。

偽造処方箋の問題点

①偽造処方箋を作成、行使した患者さにはどのような罪に問われるのでしょうか?

②騙された薬剤師には法的な責任が生じるのでしょうか?

まず①について考えてみます。

偽造とは権限の無い者が他人の名義を偽って文書を作ることを言います。患者さんが実在の、あるいは架空の医師名を使って処方箋を作る行為は偽造に相当します。

本例のように、本物の処方箋をカラーコピーして偽物を作った場合、または偽の印鑑などを使って偽の処方箋を作る事も偽造の1つと言えます。

偽造と似ている行為に変造というのがあります。これは権限のある文書に内容を変えることを言います。

例えば、本物の処方箋の中で、処方薬の名称や薬の錠数の部分を削り取り、処方箋とは違う薬剤名や錠数を記入した場合は変造認あります。変造も偽造に準じた刑罰が下されます。

この偽造、変造には公文書偽造と私文書偽造があります。

国公立病院に勤務する医師など、公務員が作った処方箋を偽造、変造した場合は、公文書偽造罪となり、1年以上10年以下の懲役刑に処せられます(刑法第155条)。

また、開業医や私立病院の勤務医が作った処方箋を偽造した場合、私立文書偽造罪となり、3か月以上5年以下の懲役刑になります(刑法第159条)。

そして、偽造、変造処方箋を使って薬剤を詐取したことに対しては詐欺罪(刑法第246条)が適用されます。

偽造の対象が麻薬、向精神薬の場合

当然、麻薬及び向精神薬取締法にも抵触してきます。麻薬処方箋を偽造、変造した場合、1年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金(麻薬、および向精神薬取締法第70条第14号)などに処せられます。

このように偽造処方箋の作成や行使は重大な犯罪であるので、薬剤を詐取された薬剤師は、速やかに警察に被害届を出し、その証拠として偽造処方箋を提出する必要があります。

その後、次なる犯罪防止に協力するため、地区の薬剤師会に連絡して、他の薬局にも偽造処方箋への注意を促すことが必要となります。

偽造処方箋とは気づかずに調剤を行い、薬剤を詐取された、薬剤師の処分はどうなる?

状況によっては法的責任を問われる場合もあります。

偽造処方箋は、医師、歯科医師または獣医師が交付した正式な処方箋ではないので、騙されたとはいえ、調剤を行った薬剤師は厳密には、処方箋によらない調剤を禁じた薬剤師法第23条第1項に違反したことになります。

また、薬剤師法第24条では、処方箋に疑わしい点があれば、処方箋を交付した医師に確認を行った後でなければ、調剤を行ってはいけないと定められています。そのため、簡単に見抜けるような偽造を見落とした場合、罰則規定(50万円以下の罰金)が適用されます。

今回のようにコピー特有の光沢や処方箋用紙の下端の文字の欠落などから偽造処方箋だとすぐにコピーとわかる場合は、医師に疑義照会を行わなかったという部分が薬剤師の過失とみなされ、責任を問われる可能性はあります。

偽造処方箋が原因で患者さんに薬害が出た場合

偽造処方箋に記載された薬剤の錠数が添付文書に書かれた仕様基準の量から逸脱していたり、記載された薬剤の併用禁忌があったりしたのを、薬剤師が見逃し、薬剤を詐取した患者さんに薬害が出て健康を害した場合も薬剤師が責任を問われる可能性が出てきます。

只、こういう場合、偽造処方箋を持ってきた患者さんのほうに罪が重く、薬剤師の責任はその分、減殺されます。

偽造処方箋によって詐取される薬剤は麻薬や向精神薬が主ですが、パイアグラなど生活改善剤の詐取例も報告されています。

このような処方箋を応需した場合は、他の処方箋以上に注意深く確認し、処方箋の用紙や処方内容に不自然な点がないかどうかを見極め、処方箋を持ってきた者に健康保険証の提出を求め、本人確認が必要と思われます。

コピー処方箋と気付かずに調剤する

ある患者は正規の処方箋に記載されていた向精神薬の一回投与量と投与日数を改ざんしてからカラーコピーを行い、薬局7箇所に持ち込みました。

7薬局の1薬局で、偽造処方箋を受け取った薬剤師が、改ざんされた数字の書体が違っていることに気付いたために発覚しました。

この患者は同時に4カ所の医療機関から向精神薬の処方を受けており、偽造したのはそのうちの一枚。

医師が患者の複数受診に気付き、処方箋の発行を中止しようとした時に、患者は処方箋を偽造します。偽造処方箋は正規の処方箋がベースとなっているために、一見して偽造と見破るには難しいのです。

とりわけ正規の処方箋をそのままカラーコピーしたのを看破することはほとんど困難と思われます。

予防として「不自然さを見逃がさないで」

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東京都内の医療機関が発行した処方箋が偽造されて、近畿地方の薬局に持ち込まれたことがありました。

この場合は近畿地方の薬局からの疑義照会から偽造が発覚しました。

患者は偽造処方箋を使用する時、「帰省したため、処方箋を持ってきた」と。この場合はコピーではなくて手書きでした。

その上に交付年月日、患者指名、医療機関の名称、医師名が架空のものに変更(保険者番号と処方内容は同一)されていて、計6種類の偽造処方箋を患者が使い分けていました。

また、処方箋用紙については、パソコンとプリンターを用いて、本処方箋用紙に似せるため一から偽造したということです。

薬局薬剤師に期待するしかない

偽造処方箋が発見された場合は、速やかに近くの警察署へ通報し、管轄区域の保健所、薬剤師会に情報提供し、被害拡大の防止に努めることが重要です。

向精神薬の乱用は、患者自身の健康被害だけでなく、犯罪に関与する可能性もあるなど社会的にも大きな弊害を齎してしまいます、今の段階では、偽造処方箋による不正入手の防止は、薬局薬剤師に期待するしか方法がありません。

向精神薬の処方箋に少しでも不備を感じることがあれば、即座に疑義照会をしてほしいと、東京都麻薬対策関係者は強調しています。

向精神薬処方箋応需の際の注意事項

下記のような注意事項を東京都や厚生労働省が通知しています。地方もこれに準じています。

  • 初めての患者さんで医療機関もなじみが無いようであれば、処方医に疑義照会してから調剤をする。とにかく慎重に対応する
  • 処方箋の記載事項は不自然に欠けていないかどうか(向精神薬の規格の記載が無かったり、用法の記載がないとか)
  • 用法用量に改ざんの形跡があるかどうか(訂正印のない訂正等)
  • カラーコピーされた処方箋ではないか(朱肉の色が微妙に違う、インクに独特な光沢がある等)
  • 筆跡の異なる字で書き足されている箇所があるかどうか(手書きの処方箋に筆跡を似せて処方を追加している)

※②~⑤については、処方箋を持参した者に疑義問うだけでなく、薬剤師法24条に基づき、疑義照会が必須です。

※偽造処方箋により向精神薬が不正入手された場合、管轄の保健所等に向精神薬事故届を提出。

※偽造処方箋を発見した場合、その処方箋を持参した者の住所、氏名を確認し、その処方箋を預かり、保健所等に提出。