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破目になりました。90年に約3万軒あった小規模薬局は、98年までに約2万軒までに激減してしまいました。

その一方で勢力を着実に広げているのがチェーン薬局でした。日本でもよくみられる現象ですね。

チェーン薬局の圧勝!

米国チェーンドラッグストア協会の調べによると、小規模薬局の売場面積は216㎡、平均従業員数7.6人。チェーン薬局の売り場面積は886㎡で平均従業員数は22.8人。

大手スーパーになれば、店舗の規模はその5~10倍。集客力、品揃え、利便性、売上高、仕入の購買力等、まともに勝負すれば、小規模薬局の勝ち目はありません。

こうして競争に敗れた小規模薬局は閉局に追い込まれていきました。

小規模薬局の経営を困難にしているもう1つの障害

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「マネジドケア」という医療保険の圧力によって、もたらされた調剤業務の利益率低下にあります。

当時、公的医療保険の対象者が高齢者や低所得者に限られていたアメリカでは、国民の7割がどこかの民間医療保険に加入していました。

マネジドケアは民間医療保険の1つで、加入者が受診できる医療機関の給付対象の薬剤を制限したり、医療内容を審査することで効率性を追求しているのが、特長の保険です。

医療費の急増に伴い、出来高払いを採用していた今までの民間医療保険の保険料が高くなったことがきっかけに、80年代後半から「マネジドケア」が急速に広まりました。

90年代に突入すると、勤労世代がどんどんマネジドケアに加入していき、90年代後半になると、大部分が加入していきました。

マネジドケアは、薬局に医師が出した処方医薬品を値段の安いジェネリック医薬品に変えることを義務付け、その傍らで、薬剤の給付額を従来型民間医療保険よりもかなり下げました。

アメリカが当時、公表していた各薬剤のAWP(AverageWholesalePrice=平均卸値)によると、マネジドケアの多くはAWPから10~15%を差し引いた額しか給付していません。

こんな厳しい条件を小規模薬局も含め各薬局が受け入れるのは、マネジドケアと契約を結ぶことによって、その保険の加入者が来局する可能性を見込んでいるからでした。

マネジドケアに加入した患者が少なかった頃は、薬局はその患者を無視することも可能でしたが、マネジドケアの保険に加入した者が増加していくと、マネジドケアと契約をする必要性に迫られてきました。

それが原因で、処方箋調剤が薄利多売傾向に走ってしまい、小規模薬局の経営が困難になっていきました。

日本が参考にしていい小規模薬局の生き残り対策

チェーン薬局に飲み込まれ、その上、調剤業務の利益減少という悲劇に見舞われたアメリカの小規模薬局ですが、相変わらず厳しい状況のなかでたくましく成長を続けている小規模薬局もあります。このような薬局にはある共通点がみられます。

きめ細かいスキマサービスの提供と医薬品の共同購入などで薬局同志のネットワークを作り上げていることです。

例えば……

 

数種類の薬を混合する自家製剤や無菌製剤は手間がかかり、忙しいチェーン薬局は敬遠することが多いようです。

また、患者への丁寧な服薬指導と薬の宅配など、当時のチェーン薬局にはなかったきめ細やかなサービスと応対で顧客の心をしっかりと掴み、成長を続けているようです。

また、小規模薬局同志が地域ごとに共同購入組織を作る、あるいは薬局の経営を共同化して、経営的な体力強化に取り組むケースが増えてきました。

このようなアメリカの小規模薬局の生き残り対応策は、薬価差益の減少、チェーン薬局との競争激化に飲まれ込みそうな日本の小規模薬局の参考になる部分が多いです。

当時からかなりの月日が経った今、そのようなアメリカの対応策に準じて頑張っている日本の小規模薬局も見受けらえるようになりました。

 

チェーン薬局に負けない薬局作りの具体例

ここではチェーン薬局が手掛けないであろうサービスに小規模薬局が挑む具体例を紹介sます。

コンパウンディング 自家製剤

約4~8種類の既製剤を混合し、それぞれの患者さんに合ったカプセル剤やクリーム剤を作るサービスです。非常に手間がかかるために大型チェーン薬局は取り組もうとしません。

しかし、このコンパウディングは利益率が高いので、小規模薬局がチェーン薬局に対抗できる有益な武器となります。

ミズーリ州カンザスシテイのSファーマシーでは皮膚科受診の患者さん、ホルモン療法や癌の化学療法により吐き気止めの薬が必要な患者さんなどを対象に積極的にコンパウンディングを行っています。全て医師の処方箋に従って実施していますが、一日処方箋枚数120枚のうち、30枚がコンパウンディングの指示があるそうです。

Sファーマシーの薬剤師の一人が「コンパウンディングを行っている薬局はまだ少ないので、自家製剤を希望する処方箋は市内全域から集まってきます。また、これらの患者さんをチェーン薬局から紹介をされることもよくあります」と。

コンパウンディングを行った場合、薬剤の原価に一時間あたり75~100ドルを上乗せした額を同薬局は保険会社に請求します。実際には減価が5~10ドルのケースが多いので、薬剤の調整に30分かかった場合、総額は約50ドルになりますが、患者の自己負担分(約10

ドル)以外をマネジドケアから全額給付されることになります。

当薬局では、これから地域の医師にコンパウンデイングの処方箋の受け入れを広く宣伝することで、利益も出易いこのサービスをさらに拡大していく考えのようです。

無菌調剤も利益率アップ

無菌調剤もコンパウンディングと同様に利率が高い調剤業務です。

クリーンルームを導入しなくてはいけないので最初に設備投資が必要ではありますが、チェーン薬局が避けたがる調剤業務の1つであるため、差別化を図るために無菌製剤にとりくむ小規模薬局が増えています。

ミズーリ州のワルシャワのJファーマシーも無菌調剤に積極的にとりくんでいます。

当薬局では、専任のファーマシー・テクニシャン(調剤助手)を育成して無菌調剤の担当をさせるとともに、無菌調剤を計画している他の薬局に対して研修を施しています。マネジドケア保険の患者に一般調剤を行っても粗利益は約10%で、無菌調剤の粗利益は約45%にも上昇します。

中心静脈栄養法等を必要とする在宅患者さんは今後、増加すると考えられるので、無菌調剤は有益な市場になると、Jファーマシーの経営者は予測しています。

顧客とのコミュニケーションアップで生き残りに成功した薬局

ミネソタ州にあるバッファローのBファーマシーは以前から行っていたサービスに一年半、さらに磨きをかけたことによって顧客を取り戻すことに成功した薬局です。

「大手の総合スーパーがきてから、地域住民のショッピングの仕方が変わってしまった。多くの小売店が廃業に追い込まれたし、町内にあった小規模薬局4軒のうち2軒が閉局した」と、Bファーマシーの経営者が話していました。

このままでは自分の薬局も潰れてしまうと、対応策を考えだしました。

まず、顧客の顔を記憶しておいて、次に来局した時にはファーストネームで呼ぶことを、従業員に徹底させました。同時に顧客のカウンセリングには、より多くの時間をかけました。

患者さんも減っていたこともあって、1対1でカウンセリングしたことが好評だったようです。また、駐車ペースの確保、処方薬の備蓄品目数を増やす、時間外の休刊にも必ず応じるなど、考え付くサービスを片っぱしから実践していきました。

「顧客が望んでいるのに、チェーン薬局では手がけていない、手掛けにくいサービスを率先して取り組んでいき、そこを強調していくことが、小規模薬局の生き残りにつながると、全での経営者は話してくれました。

封を開けた使いかけの薬でも返品の際、全額を返金する薬局

ニュージャージ州リッジウッドのDファーマシー。この薬局は約8000人の代金後払いの顧客を抱えています。

毎月、請求書を送るときに、必ず健康に関する情報、お買い得品情報を掲載したニュースレターを同封しています。

後払いは代金回収に手間や経費がかかりますが、顧客の固定化に適しています。また、同封しているニュースレターを通じていかに手厚いサービスをしているかを理解してもらうことができます。

※手厚いサービスとは……

買った薬や化粧品の封が開けてあっても、返品時には全額返金が基本です。顧客が求める商品が無かった場合、必ず小さなプレゼントを渡し、「次にいらっしゃったときには、必ず用意しておきます」と声かけを率先して行っているとか。

この薬局は新聞ラジオ、マスコミを使っての広告は一切、やっていませんが、このような個々のサービスが広告以上の効果を作っていると、ここで働く従業員は話します。

この薬局から50m先に、数年前、大型薬局チェーンができましたが、このような手厚いサービスのお蔭で、売上は年率10%以上の勢いで売り上げが伸び続けているようです。