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自分の薬局では調剤ミスに関して言うと、ヒヤリハット程度(患者さんの手に渡るまでにミスが発覚し、やり直しができる)でとどまっているものが多く、何とか無事に今日まで調剤業務をやってきました。

しかし、患者さんとのコミュニケーションのとり方はあまり上手くなかった反省しています。

これから薬剤師になろうとお考えの方にはいい参考例ではありませんが、反面教師の役目を担うつもりで紹介いたしますね。」

白血病告知事件

ハイドレアカプセルという慢性骨髄性白血病などの抗癌剤にまつわる出来事です。

まだ、薬局での調剤業務を始めた頃で調剤業務だけでなく、患者さんとのコミュニケーションの方でも緊張していました。

ましてや、相手は白血病の患者さん。当時はすでにガン告知が当たり前になっていましたが、この患者さんは医師からはっきりと白血病は告げられていませんでした。従って、ハイドレアカプセルも「免疫力を上げる薬」と説明を今までしていました。

白血病とはいえ、症状も非常に軽くとても元気な患者さんでここに来られれば、30分は話して帰られていました。

「えー、今日はいくらですか?」

「えーと、」

と言ってから、領収書を覗き込み、「18570円です」

「まあ、抗がん剤の薬は高いよね」

「そうなんですよ、一カプセルのお値段がとても高くてですね……」

ここまで喋って、ハッとしました。

 

最後の1%の患者さんの希望をぶち壊す

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この患者さんは自分が白血病という血液のガンだということをはっきりと知っておられない方だったと思い出したのです。

私の今の言葉は、「あなたは実はガンなんです」と、言ってしまったことと同じです。

患者さんの顔は少々、ひきつっていたように思います。

 

おそらく99%はガンと自分でも感づいているけど、医師や家族ははっきりとガンだとお客さんに話していないから、1%は「ガンではないかも」とほんのわずかとはいえ、救われていたはずなんです。

その大事な1%を私はぶち壊してしまったんですね。

おそらく、患者さんは自分はガンだとは思うけど、医師や家族からそうはっきりと告げられたわけではなかったから、ひょっとしてガンではないかも?

と、今迄はそこに縋って生きてこられたのです。

 

その後、私は患者さんにどう対応したのか全く、覚えていないのです。

十数年たった今でも全く思い出せないのです。

それ私の辛辣な言葉がショックだったのか、次から約半年間、患者さんはこちらには来られませんでした。

 

半年後……

私もあれから、あの患者さんのことがずっと気になっていました。謝りたい……しかし、どう謝ればいいのか、電話番号も知っているのに、悶々と過ごすだけで患者さんに対して何もすることなく、半年が過ぎていきました。

半年後の在る日、あの患者さんの処方せんのFAXがありました。「何故、また、 今ごろ、うちに?」

薬を準備し、ドキドキしながら、患者さんが来られるのを待ちました。その間、患者さんにどんな言葉をかけるのが適切なのか、色々、考えましたが、全くわかりませんでした。

 

患者さんは

患者さんが来られた時、「お久しぶりです」とだけ言いましたが、患者さんはそれには答えず、「薬、できてる?」と。相変わらず、例のハイドレアカプセルが処方されていましたが、半年前と全く変わらず、病気もそんなに進行していないことがわかり、安堵しました。

薬剤師として、患者さんから不明の半年間を聞き出さなくてはいけません。しかし、尋ねる勇気がありませんでした。

患者さんのお元気な様子から、具合が悪くて入院されていたのではないことは分かっていました。全く何事もなかったように半年前と同じように患者さんは雑談されるのです。

今、思うのに、それは患者さん流のやさしさだったのかもしれないと。私にガンだと100%突きつけられて、ショックでここに来られなくなったことは事実でしょう。

そして半年後、再び、戻ってきてくださったということはあの時の私を許して下さったのだと私は考えるのです。でも真実は闇の中でわかりません。

 

自分からすい臓がんだと

例のことは全くお互い、触れず、他の雑談ばかりして月日が経っていきました。白血病の方はハイドレアカプセルがよく効いたのか、全く進行しません。私はほんと、救われていました。

「オレ、膵臓がんらしいよ。精密検査入院するから、しばらくは来れんけど、退院したらまたくるから」

「あの、手術は?」と言ってから、私は又、よけいなこと言ったかしらと思ったけど、もう遅いです。

どうも、あれから十数年も経っているのに一向に患者さんとのコミュニケーションのとり方がわかっていません。

「手術はもうできないって。検査して抗癌剤の点滴を何回かしたら、退院して、通院することになるから、その時は宜しくお願いよね」と、ニコッと笑って帰って行かれました。

お客さんが一回りも二回りも大きく感じられました。

その一方、全く進歩の無い私です。さらに落ち込みました。

患者さんは退院され、約束通り定期的にこちらに来られました。TS1-25という抗ガン剤が処方されていました。

一時は腫瘍も小さくなり、白血病みたいに上手くいくんじゃない?と、二人で歓びを共有し合っていました。

「もう、背中が痛くてしょうがないから入院するよ」

TS1-25を投薬し始めて3か月後のことです。

 

患者さんから学ぶことが多すぎて

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一応、薬剤師には患者さんを服薬指導するという仕事がありますが、私の場合は患者さんのほうからいつも教えられっぱなしです。

薬剤師になって何十年にもなるのにと情けなくなりますが、患者さんとは一期一会です。患者さんが100人いれば、コミュニケーションも100通りあるんですね。

薬学知識のみならず、コミュニケーションスキルを上げていく努力が必要です。