aki-1

現在、薬剤師は病院の中でもあらゆる部門で活躍する場が与えられています。救急部門もその一つです。

救急部門は医師や看護師の他に、コメディカルなどを含むすべての医療スタッフが参加して医療チームが組まれることが望まれます。

このH大学病院の救急救命センターには、救命救急科部長、その下に各診療科の専門医師、看護師、薬剤師、放射線技師、臨床工学技士などがおり、24時間体制で診察に当たっています。

この医療チームの一員として働く薬剤師の業務内容を紹介します。

H大学救命救急センターの状況

kyuukyuu-center-1

当センターは第三次救急医療体制といって、心肺停止、重度外傷、脳血管障害や急性中毒など、あらゆる原因によって生命が危ぶまれる状態に直面した救急患者の治療にあたっています。

H大学病院にはICU、CCU、熱傷治療室などが十分に備わっており、平均入院患者数が約20人、搬送されてくる患者さんの数は一日平均3~4人です。

救命救急センターでの薬剤師業務

薬剤師も勿論、24時間体制です。一人の専任薬剤師と他の病棟業務担当者が交代で、昼間2人、夜間1人という体制で業務しています。

普段は、毎日、朝、行われるカンファレンスに出席し、入院患者さんに使用されている薬の副作用などについての報告など、又、処方計画にも参画しています。

解散した後は、在庫医薬品の確認と補充注射液の調整などを行っています。

それらの業務の間にも、救急車が来院してくるという通報があると、呼び出し連絡があり、各スタッフ達とともに救急患者さんが入る初療室に向かいます。

初療室での薬剤師の業務

初療室での治療は緊急を必要とするため、医師の指示は全て口頭で行われます。救急車の来院予告があり、救急隊員からの無線連絡による患者さんの状況報告から、必要とされる医薬品を取り揃え、患者さんの到着を待ちます。

例えば、脳疾患が疑われる場合は気管内挿管用医薬品や降圧薬、心臓疾患では血管拡張薬、抗不整脈薬と血栓溶解薬などを準備します。医師の指示に対しては間髪を入れず、対応していきます。

急性中毒患者さんが運ばれてきた場合は、原因物質がわかっている時は、その物質が含まれる尿中や血中の濃度を測定し、対処法の選択を考えます。

原因物質の特定ができない場合は、定性試験を行い、原因物質を確定します。それらの情報をもって医師に提供します。

初療室での最初の治療は大体、30~1時間程度かかり、場合によってはそこで緊急手術が行われることもあります。この間に薬剤師は使用する医薬品の準備を行い、時によっては医師の指示に従って治療の補助に加わることもあります。

ICU,CCUでの薬剤師の業務は?

初期の治療が終わると、患者さんはICUやCCUに移送されます。

そのような患者さんに注射指示の処方箋が出されると、薬剤師は処方箋に従い、医薬品の取り揃え、注射薬の混合を行います。

一日の注射薬の混合の件数は大体、30~50件ぐらいです。そのほかに処方箋に書かれた医薬品の記載漏れなどをチェックし、その結果を医事課に報告します。

患者さんの情報は職種問わず共有化

個々の患者さんのベッドの横には、常に経過記録紙が置かれています。薬剤師もそこに記録されたバイタルサインなどを見ながら、薬の効果の判定、副作用の有無などをチェックします。

特に当センターでは傷害等で、ダメージを受けた脳の保護や蘇生を目指して体を冷やす治療である脳低温療法を行っています。

その施行中に投与する麻酔薬や筋弛緩薬、抗菌薬などの病気の状況に合わせた管理も薬剤師が行っています。その薬剤の使用量や種類は患者さんの状況を見ながら、医師に提言しています。

医薬品の在庫管理

色んな疾患の患者さんが搬送され、初期治療終了後に入院する場合がほとんどであるため、使用する医薬品の数も多くなります。

そのため、薬剤師は常に医薬品の在庫確認や補充に気を配っています。いつでも、また、どんな指示がきてもすぐに取り揃えられるよう在庫量をある程度増やしています。

その一方で、使用する医薬品は限定し、それを薬剤師から医師にその範囲内での使用を求めています。

又、処方の複雑化を防止するために、当センター内だけで使われる約束処方を作って、業務が滞らずに行われるよう便宜を図っています。

その上、緊急時に使用量が増える麻薬や血液製剤、毒薬などの医薬品なども薬剤師が厳重に管理しています。

医薬品情報業務

当センターには色んな分野の専門医がいるため、使用医薬品の適応、投与量、副作用情報などたくさんの質問を薬剤師は受けます。

そのため、当センター内にある薬剤室のコンピューターを本院薬剤部の医薬品情報と学内LANで結び、容易に情報検索できるようにしています。

中毒物質の同定と薬物濃度の測定

当センターに搬送される薬物中毒患者の数は年々、増加しています。

又、搬送されてくる時間帯も夜間が多いため、24時間、血中濃度測定ができるようにしてあります。急性中毒の原因になる物質の約80%が医薬品です。

搬送された薬物中毒患者さんの大体は、精神科に通院している患者さんであちこちの病院で処方された薬剤を一度に多量服用して搬送されてくるというケースが多くなっています。

このような場合は初療時の症状から原因物質を推定したり、患者さんから採取した血液や尿から原因物質を乱用薬物スクリーニングキット(トライエージ)などで判定したりします。

これも勿論、薬剤師の仕事です。

大量に服用してしまったアセトアミノフェンや三環系抗うつ薬などは定量分析を行い、薬物の除去方法などの情報を医師に提供します。

薬学生や他の医療スタッフの教育

救命救急医療での実習は一般の病院業務とは違った経験ができるので、薬学生にとっては魅力的な仕事場のようです。

特に中毒患者さんの処置法や薬などによる有害反応の検索や中毒物質の同定や血中濃度測定できることが、薬学生から評価を得ているようです。

又、新人医師や医学生には中毒情報について、看護師には輸液や中毒情報、救命救急士には初期治療に使用される薬剤について指導を行っています。

まとめ

救命救急センターでは種類も量もたくさんの医薬品を必要とします。患者さんの状態によっては適応外の医薬品を使わなくてはいけないこともあります。

そんな時に薬剤師が関与することで使用上の安全性、医療の質も向上します。又、適切な管理を行うことで使用医薬品の診療報酬請求漏れのチェックができるのも薬剤師ならではの行為です。

このようなことから、救命救急センターに薬剤師が常駐することはセンターにとっても意義があります。