aki-1

今、どこの町を歩いていても、昔からあった小さな本屋さん、小さな酒屋さん……そして小さな薬屋さんはほとんどありません。

あったとしても小さく小さくなって、まるで町に遠慮して建っている感じです。

今まで来ていたお客さんはどこに行ってしまったのでしょうか?

現在、町には、大型スーパー、大型書店、大型ドラッグストアが乱立し、その巨大な建物の中に小さな○○屋さんに来ていた町の人々は、吸い寄せられてしまいました。

そんな中、薬剤師は夫婦二人だけという小さな薬局ですが、地域の住民から信頼されて、頑張っている薬局を紹介します。

この薬局さんから、元気をもらいましょう。

小さな薬局と言うけれど……

yakuzaishi-fuufu-1

薬業界の大きな情報誌は、ある程度規模の大きい薬局を取り上げることが多いです。

そして非常勤を含めて薬剤師が5~7人の薬局を《小さな薬局》と書くことが多いです。

この表現の仕方に抵抗を示す人が多いです。

ある程度、規模の大きい薬局というのは、情報が入り易く、患者さんへの情報提供もしやすいです。調剤業務では最新の器具、機械が導入されていて、調剤薬局の新しい未来像として記事も書きやすいのでしょう。

薬局関係の情報誌を見ると、洗練されたおしゃれな薬局が多く掲載されています。

 

しかし、小さい薬局と決めつけられた薬局だって、それなり規模の中で、アイデアと工夫で、大型薬局と同じ質、あるいはそれ以上の調剤や服薬指導の結果を出しているところもあります。

薬剤師一人、二人でありながらも、それなりに同業者、異業者、患者さんから評価を受けている薬局は、「小さい薬局」と言われることに抵抗を感じているようです。

これからご紹介する薬局は、薬剤師二人でありながらも「面」で処方箋ヲ受けている薬局です。

「面」で受けるとは、医療機関を限定せずに、広範囲の地域の医療機関からの処方箋を受け付けるということです。

薬剤師二人でどのくらいの医療機関と……?

処方箋一枚しか来ない病院も含めると、総合病院が約20、開業医が約30、歯科医が約20です。

月間の処方箋枚数は、約1000枚です。一日平均すると、約40枚になります。

面分業をメリットとして

どこの医療機関の処方箋が来ても受け付けることが前提の面分業は、其々の病院の使用する薬が千差万別であることを考えると、在庫が過剰になりそうな気がします。

しかし、特定の医療機関に頼ることも無いので、その医療機関のお家事情(医師の死亡など)や、経営状況(患者数の減少など)に振り回されず、一定のリズムで仕事ができるというメリットは大きいと考えています。

当薬局に来られる患者さんはほとんどが地元の人

処方箋をカウンターの上に置いて、そのまま一旦、帰宅され、薬ができた頃を見計らって再び、薬局に来られます。

取りに来られなかった場合は、自宅までお持ちします。

このようなことは待ち時間を考えずにすむので、患者さんにとってもメリットなことのようです。

歴史ある薬局

このような患者さんとの付き合いができるのは、この薬局が古くからあり、地域密着型の薬局だからと思っています。

私の父が、昭和30年代から、薬局を経営していました。私は薬科大学を出た後、製薬会社に就職しました。

当時はまだ、MRという言葉もなく、プロパーとして働いていました。入社して、5年後、父に呼び戻され、一緒に薬局をやることになりました。

初めて処方箋を受けた頃

昭和50年になりたての頃です。当時は現在のように、医療機関から地理的に離れた薬局に処方箋がくるというような状況は考えられませんでした。

病院内に入って、何とか患者さんに処方箋を持ってきてもらおうと働きかけたり、病院からの帰りに薬局の前を通らないと帰れないような感じで、病院の周りに調剤薬局が乱立していた時代でもありました。

今でも、その傾向は強いですね。大病院の周りには大型調剤薬局が乱立しています。

調剤のレベルは薬局の大きさは無関係

法律的に調剤薬局の調剤は処方箋の総枚数による法的な相違はあるものの、それ以外。

求められるものは薬局が大きかろうが、小さかろうが、画一です。

特に調剤は、どこの薬局でも同じであることが求められています。

「うちは小さい薬局ですから、この調剤は出来ません」というような断わり方は、法的には認められません。

保険薬局として認定されていれば、世に出回っている処方箋の調剤は出来て当たり前なのです。

そういう思いで処方箋受付を始めたのですが、当初の処方箋枚数の目標は一日10枚でした。

しかし、実際は月に歯科医院から月10枚、受け付けただけでした。

近くの開業医に声をかけるというやり方もありますが、、「うちに処方箋を出してください」というやり方は、あまり好きではありませんでした。

ただ、父の頃から御縁があった地元の医師会長K先生と約二年間、医薬分業について話をしていく中で、K先生の病院から院外処方箋がくるようになりました。

K先生と二年間、話し合った内容

当時(昭和50年頃)、病院の大幅な処方箋料の引き上げをし、医薬分業に移行させようと計らっていた国の意向は、町の薬局の中にいても伝わってきました。

A先生にお会いすると、いつもこの話になりました。

そして、利益重視に考える開業医が多い中、医師会長という立場もあってか、または欲の無い人というのもあったのか、A先生は高齢者の処方箋から院外に出されるようになりました。

また、A先生自身も院外処方箋の発行について分析し、メリットを考えていました。

  • 処方箋料が入る
  • 薬の仕入れを最小限にできる
  • 薬の備蓄も不必要となる

デメリットとしては、薬剤による収入減少、メーカーからの情報提供が減るというようなデメリットも考えられた上で、昭和55年頃には患者全員の処方箋を院外に出されました。

A先生がきっかけではあったけど……

院外処方箋の受け入れる上で、絶対にマンツーマン、1対1でやらないほうがいいと考えていました。

そこで、数人の薬剤師に声をかけ、A先生と食事をしながら話す機会を作りました。

話の内容は……

薬の在庫は近隣の薬局間で融通し合うという話になりました。

一方、一人、二人しかこない患者さんのためにわざわざ、薬を揃えるということに抵抗を示す薬剤師もいました。

この辺りの備蓄問題は、薬局の経営者によって今でも、考えが異なります。

薬剤師は夫婦二人のみでどのように仕事をこなすか?

薬剤師夫婦二人で、どのように調剤業務を始めとする薬局の仕事をこなしていくのでしょうか?

在庫数について

50~60の医療機関の処方箋を受け付けているので、約2000品目を備蓄しています。

この備蓄医薬品のうち、常に動いている医薬品は、月に約500品目です。

薬剤師二人に対して2000品目の在庫は、管理が大変です。ただ、当薬局は分業を開始した時から、処方箋に在庫の無い薬が書かれてあると、最低、次の2回分は発注していました。

患者さんが次回、来られた時、すぐに出せるようにというやり方で少しずつ、品目が増やしてきたので、大きな負担を感じることなくやる事が出来ました。

とはいえ、薬剤師が少ない薬局は、在庫に関しては、相当の投資の覚悟をしなくてはいけないと思っています。

無駄はできるだけ無くさなくてはいけませんが、備蓄の不十分は、せっかく来て下さった患者さんに迷惑をかけてしまうことになります。

患者さんが持ってきた処方箋の中に在庫の無い薬があった場合は?

薬を小分けしてくれるセンターで対応していますが、自分でとりに行けない時は、午前中に発注すると、午後から医薬品卸さんが届けてくれます。

待ってもらえる場合は、それでやりますが、緊急の場合、パッケージ単位でしか発注できない場合でも、使った後、薬が余って無駄になるとわかっていても、発注し、医薬品卸に急ぎで持ってきてもらうこともあります。

近くの薬局とは。お互い様ということで薬の貸し借りなど、協力し合っています。

在庫管理について

数量的な在庫管理は、さすがに妻と二人でやらざるを得ません。

当薬局のやり方は、薬の箱を開けた時、箱に表示してある製造番号と有効期限の日付を切り抜き、薬にくっつけてゴムで括っておきます。

残りが少なくなると、次の100錠の箱を注文しますが、ギリギリまで開封しません。早々と開封してしまうと、その薬の患者さんが入院されたり、死亡されたりしてその薬が不要になることがあるからです。

一旦、開封してしまうと、返品ができなくなります。

調剤時に有効期限が切れていれば、廃棄して新たに発注します。

情報の整理方法

添付文書の改訂の場合は、目を通した後、重大なものはわかりやすくマーキングして、調剤台の前に貼っておきます。

保険情報はファイルにしてとっておくのですが、次次とくる情報が多くて、整理しきれないのが、悩みの種です。

薬剤師が少ないのに薬剤師会の常務理事として活動

薬剤師会の常務理事で社会保険を担当しています。

薬剤師が二人しかいないのに、薬剤師会の仕事で薬局を空けるのは大変ではないですかと、よく聞かれます。

薬局を空けるといっても、出ずっぱりではありません。妻もOKしてくれました。

もともと保険に大変、興味を持っていて、社会保障制度全般についてもっと知りたいという知識欲は持っていました。

もし、自分の薬局にばかり閉じこもって仕事をしていたら、このような問題を考えたり、勉強したりしていたかは疑問です。

妻の忙しさ、大変さは理解しています。自分が薬剤師会の仕事をしている間は、一人薬剤師として働かなければいけませんから。感謝しています。

どんな薬局にしたい?

時代の流れで、どうしても医薬分業、調剤業務に目が向きがちですが、私は地域の薬局として、OTCの相談、販売にも力を注ぐつもりでいます。衛生材料、介護用品、雑貨も揃えて、どんなお客さん、患者さんにも対応できる便利な薬局を目指しています、また、薬局内のトイレや段差について、バリアフリーにやり変えました。

この頃は、病人が待っていられる薬局にするにはどうしたらいいかあれこれ考えています。
「癒し系」という言葉が浮かぶような薬局を目指したいのですが、植物を置くと、患者さんによってはアレルギーが出てしまう場合があるので、水槽に熱帯魚でも入れてみようかと思っています。

 

(薬局の在り方を真剣に考える)

今、日本のあちこちで「かかりつけ薬局」という言葉が飛び交っていますが、この言葉もどこか1人歩きしているような感じがしてなりません。

これからはもう少し真剣に考えていかなくてはと思うのです。

当薬局の考えとしては、商売的な間隔とは少し離れた考えでやっていく実験的な薬局を目指そうと考えています。

 

例えば、「犬や猫よけにスミチオンは使えますか?」と相談に来るお客さんがおられます。

実は、このような日常生活に密接した部分で薬剤師の知識が多いに役立ちます。何も調剤だけではありません。

OTCを購入のお客さんの健康アドバイスなども薬剤師の職能を発揮できます。

そして、いつも相談を受けていると、その人の日常の背景を把握できるので、その人が処方箋を持って来られた時、的を得た服薬指導ができます。

だから、OTC購入、相談のお客さんも処方箋ヲ持ってこられる患者さんと同じぐらい大切で気になるお客さん達です。

わからなければ調べます

当薬局は、薬のことを中心に

「どんなことでも相談にのる」

「相談されたら、親身になって答える」

「わからなければ、調べる。わからないままにしない」

という体制でいます。勿論妻も同じ考えです。

レジカウンターの横には、数冊の専門書を置いています。また、インターネットも使ってお客さんと一緒に検索して画面を見ながら、説明します。

「ここまでやってくれるの」と、言われた時は、嬉しかったです。

薬剤師という仕事を楽しみながらやっている

お客さんや患者さんとのコミュニケーションは、本当に楽しいです。

患者さん達からクレームが全くないわけではありません。でも、クレームも「これからもこの薬局に来たいのだから、ここを少し工夫してほしい」という内面の声に思えるのです。

もう、ここに来るのが嫌と思うのなら、黙って、何も言わずに、よその薬局に行くでしょう。そのほうがクレームよりも怖いと思っています。

クレームを言われたことは失点ではありますが、ただそれだけで終わらせるのは勿体ないし、進歩がありません。

「よし、この患者さんにとって居心地のいい薬局を目指そう」と思えばいいのです。

二人だけど在宅医療にも

親の代から薬局をやっていると、子どもの時、近所のおじさんおばさんだった人が、今は高齢者になっています。

子どもの頃、可愛がってもらった恩返しではないけれど、在宅医療という形で面倒を見てあげたいのです。

薬を届けに行くと話し込んでしまうそんな間柄なので、元おじさん、おばさんたちの体が不自由になって薬局に来られなくなったら、在宅でフォローしてあげたいと思うようになりました。

全く知らない人のところにおしかけるようにして行くのではないのではないので、他の薬局よりは在宅医療に参画しやすいと楽観しています。。

ここまでやって、やっと地域に根差した薬局と言えると思っています。