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患者さんが薬局内に連れて入ってきたペットが原因で、他の患者さんの具合が悪くなってしまった場合、薬局の責任はどうなるのでしょうか?

事例

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患者さんが小型犬を抱いて、薬局の中に入ってきました。

「申し訳ありませんが、犬を薬局の中に連れてこられるのは、遠慮してもらえませんか?」

薬剤師は、低姿勢で言いました。

「車の中に置いておくと、寂しいといって泣くのよ。それにずっと抱いているんだからいいじゃないの」

「万が一にも、他の意患者さんにかみついたりされると、困りますので」

「あら、ちゃんと予防接種してるわよ」

「いや、そういう問題ではなくて……、それに、薬局は清潔に保たなければいけないので、犬に限らず、ペットはご遠慮お願いいたしております」

そのとき、5歳ぐらいの男の子が入ってきました。

「あー、ワンちゃんだ、かわいい」

患者さんが抱いた犬の頭を撫ぜました。

「かわいいでしょ。ここの薬剤師さんたら、おかしなことばかり言うのよ」

突然、男の子がせき込み、苦しみ始めました。

男の子の後に入ってきた母親が、

「ちょっと、なんで薬局に犬がいるの? うちの子は犬アレルギーなのよ」

「あ、あのう……申し訳ありません」

取り合えず、謝る薬剤師。

「救急車、呼んでください。この子に何かあったら、薬局を提訴しますから」

上記のような場合、薬局はどのような立場になるのでしょうか?

どういう状況であれ、ペットを店内に入れることを許可した薬局側に、大なり小なり責任が生じてくるのはやむを得ません。

このようなことにならないように薬局は、ペット同伴の入店を拒否したいところです。どのあたりにどんな法律をもってくることが可能でしょうか?

また、ペット同伴の患者さんの入店拒否は、薬剤師法で禁止されている「調剤拒否」につながることにならないでしょうか?

薬局に来られる人の多くは、何等かの病に罹患しており、犬や猫に対してアレルギーを示す患者さんもいるでしょう。

また、患者さんにペットがかみついてしまう場合もあり得ます。とくに、抵抗しきれない小児や高齢者に危害が及んだ場合、重大な健康被害になることも考えられます。

薬剤師であれば、こうしたことを予測することができます。従って、ペット同伴の患者さんの入店を許可することは、予測可能な損害を避けるための行為義務を、怠ったという過失となります。

そして他の患者さんにそれらが原因で健康被害が生じた場合は、そのペットの飼い主と連帯責任を負わなくてはいけません(民法第719条第一項)薬局にも、責任が発生してきます(民法第715条第一項)

薬局の管理者に対して

保険衛生上の支障を生じる恐れがないよう、薬局の構造設備に関して、注意をする義務を課しています。

薬局内にペットは入ってくることは、他の患者さんの健康被害が生じてくる場合があるだけでなく、ペットの毛や糞尿など、ペットが薬局内に持ち込んだもので、店内を衛生的に保つことができなくなることも考慮されます。

そのため、ペットを店内に入れることの禁止の旨を、薬局の店頭店内に掲示する方法をとったりして、患者さんの健康被害や衛生上の問題がおきないように、予防対策を立てる必要があります。

ペットと同伴を希望する患者さんには前述の内容を説明し、ペットの入店を許可できないことを説得しなければいけません。

説得に応じない患者さんに対しては?

薬剤師法を読んでいくと、調剤の求めがあった場合でも、正当な理由があれば、調剤を拒否できるとされています(薬剤師法第21条)。

今回の事例の場合は、調剤を拒否するのに正当な事例と考えられます。

ペットの飼い主の患者さんが店内で待っている間は、ペットを店外に出しておけば、調剤を受けることは可能です。

「ペットを連れて店内に入らないこと」を処方箋応需の条件としても、飼い主の患者さんに不利益を与えることにはなりません。

ペットを店外に出すことに応じない患者さんに対しては、不退去罪の適用を考えることができます(刑法第130条)

薬局内で他の患者さんにペットが危害を与えた場合

薬局側の制止を振り切って、ペットを店内にいれ、そのペットが他の患者さんに危害を与えた場合、そのペットの飼い主の患者さんがその損害賠償責任を負うことになります(民法第718条)。

さらに動物愛護法といって動物の愛護や管理に対する法律がありますが、これはペットが他人に危害や迷惑をかけないように飼育、保管することを、飼い主に対して努力義務を課しています。

ペットを連れて薬局に入ることを希望する患者さんには、薬局内は他の患者さんに健康被害を及ぼす危険性が、高い場所であることを理解してもらえるように丁重に説明し、ペットの退去に同意してもらうことが大切です。

そして、これに応じない患者さんに対して調剤を拒否することは、正当な理由として成立します。