aki-1

調剤室には、麻薬、向精神薬など、一般医薬品とは管理が異なるものがあります。特に麻薬の管理はさらなる厳重な注意が必要です。

今回は、薬局の事務員が薬局内に保管してある麻薬を盗んだという話です。事務員、薬局開設者はどのような責任を負うことになるのでしょうか?

事務員が麻薬を盗んだ経緯

yakktoku-mayaku-1

一日の業務が終わっても、事務員はまだ仕事が残っていると、よく、薬局に一人残っていました。ある時から、事務員は薬局に出勤してこなくなりました。

管理薬剤師は数日間、事務員との連絡が取れないので、夕方にでも、事務員の自宅を尋ねるつもりでいた時、「厚生局の者ですが……」と、二人の男性が薬局に入ってきました。

「この方を知っていますか?」

と、管理薬剤師に厚生局の者が写真を見せました。

「知っているもなにも、うちの事務員ですが、彼がどうかしたのですか?」

「昨夜、麻薬の所持と使用で逮捕しました、彼は麻薬常習犯でした。自分が勤める薬局から盗んだと言っていますので、事情をお聞かせ願えますでしょうか?」

「そんな……」

麻薬が入っている金庫は毎日、中身を調べるわけではありません。でも、スタッフを信頼しているので、管理薬剤師は麻薬が盗まれていたとは微塵にも思いませんでした。

麻薬についての法律

麻薬(薬局では主にモルヒネ)は、麻薬及び向精神薬取締法(以下、取締法)によって規定され、麻薬の取り扱い方もこの取締法において規定されています。

厚生労働省、同省管轄の地方厚生局および各都道府県が監督しています。

薬局が麻薬を医療用に調剤する時は、麻薬小売業の免許が必要となります(取締法第2条1項)。

※麻薬小売業……都道府県知事の免許を受けて、麻薬が記載された処方箋(麻薬処方箋)により調剤された麻薬を譲り渡すことを業とする者(取締法第2条17号)

 

麻薬小売業者は薬事法の規定により、置くことを許可された店舗で麻薬を保管しなければいけませんが、その際、麻薬以外の医薬品を区別し、鍵のかかる堅個な設備の中に貯蔵しなければいけません(取締法第34条)。

堅固な設備とは、鍵がかけられる麻薬専用の金庫のことで重くて、簡単には移動できない固定した金庫でなければいけません。

店舗内で譲渡、譲受、廃棄などを施行した時は、その品名、数量、年月日を麻薬帳簿に記載しなければいけません(取締法第38条)。

そして、麻薬を取り扱う薬局は、保管している麻薬が減失、盗取、破損、流失、所在不明その他の事故が生じた時は、その品名、数量、その他、事故の状況を明らかにするために必要な事項を記載した「麻薬事故届」を、速やかに都道府県知事に提出しなければいけません(取締法第35条1項)

事務員は、薬局が保管していた麻薬を盗んだことから、刑法第235条が定める窃盗罪を犯していることから、10年以下の懲役に処せられます。

また、取締法は、どんな人でも許可なく麻薬を所持、施用することを禁じています(取締法第12条1項)。従って、盗んだ麻薬を所持、施用についても当然ながら、各10年以下の懲役に処せられることになります(取締法第64条の2および3)。

 

一方、盗難の被害者である薬局開設者にも罰則が適用される恐れがあります。当薬局は麻薬専用金庫を事務室に置いてありました。そして、事務員が麻薬金庫の鍵を開けたということは、その鍵は、誰でも簡単に取り出せる状況にあったということになります。

そのため、麻薬金庫の鍵が厳重に保管されていたとは認められません。

法的な管理責任は薬局開設者

薬局にある麻薬の調剤や保管などの業務は薬局開設者、開設者から委託を受けた管理薬剤師などが行う場合がほとんどです。

しかし、盗難が起こった際の法的な管理責任は、薬局開設者、管理薬剤師にあります。

從って、この薬局開設者は取締法第34条2項に違反したものとして1年以下の懲役か、もしくは20万円以下の罰金を処せられる可能性があります(取締法第70条9号)。

さらにそれだけでなく、都道府県などによる立ち入り検査(取締法第50条の38)、麻薬小売業の免許が取り消される可能性が出てきます(取締法第51条1項、第3条3項)。

過去の事例

随分前、2003年に勤務先の薬局から大量の医療用麻薬を持ち出し、知人に譲り渡したとして40歳代の薬剤師が逮捕された事件がありました。

この男性薬剤師は、末期がん患者さんの遺族が薬局に戻した未使用のモルヒネ錠約120錠を責任者に申告せず、麻薬帳簿にも記載せずにそのまま、自宅に持ち帰ってしまいました。

また、同年に何者かが夜間、薬局内に侵入し、モルヒネ錠剤が入った40kgの金庫が盗まれるという事件も起きています。

薬局は法的な医療関係者として社会的責任を強く認識していかなくてはいけません。医療に使用する麻薬が社会の悪徳の餌食にならないよう、細心の注意を払う必要があります。

医師との癒着と不正請求

続いては、薬価の安いジェネリック医薬品を上手く利用して、医師と共に不正に儲けようとした薬局開設者である薬剤師の事例です。

不正に至るまでの経緯

病院の医師を温泉付きの豪華な食事に誘った薬剤師。医師がほろ酔い加減になったところで話を切り出しました。

「ところで、先生、今度格安で仕入れた後発品の一覧表です」

と、用紙を医師に渡しました。

「こちらの薬の一般名を是非、処方箋に……」

「ま、考えておくよ」

翌日、受け付けたその診療所の処方箋を見ると、さっそく、お願いした薬の一般名がありました。

調剤した後、「請求、お願い」とレセプトコンピューターの前にいたスタッフに処方箋を渡しました。

「あれ? 先程、患者さんに渡した薬はジェネリックなのに、これには先発品が書いてあります」

「いいの、いいの。そのまま、書いてある通りに入力してよ」

薬局開設者はジェネリックを患者さんに出したのに、入力するのは先発品なのです。薬局開設者である薬剤師は、先発品と後発品の差額で利益を増やそうと企んでいました。

また、この薬局開設者は事前に、先発品とジェネリックの差額を得るつもりで事前に医師にリベートを渡していました。

このような状況が何故、外の厚生局にバレてしまったのかと言えば、この薬局開設者の下で働くスタッフの内部告発でした。

 

(法的な問題点)

薬剤師が一般名処方箋に基づき、患者さんの意見を聞かずに、先発品とジェネリックのいずれかを選んで調剤した場合、その薬のジェネリックを選択する権利は患者さんにあるので、薬剤師は患者さんの選択権利を奪ったということになります。

こ れは直接、法律違反に問われることはありません。しかし、実際に調剤していない先発品の調剤費用を請求する行為においては、そこに虚偽が介在し、調剤費の 一部を負担することになる患者さんや保険者は、本来負担する義務のない先発品とジェネリックとの差額を支払うことになります。このことは保険者と患者さん の財産権を故意に侵害する不法行為で、保険者に対する不正請求に当たります。薬局開設者は、徴収した余分な費用を両者に返還しなくてはいけません。

(調剤請求の不正)

保険薬局(薬剤師)が調剤請求を不正に請求した場合、健康保険上、保険薬局の指定取り消し処分や保険薬剤師の登録取り消し処分になることもあります(健康保険法第80条、第81条)

不正の内容がきわめて悪質な場合は、詐欺罪も問われる可能性も出てきます(刑法第246条)

また、処方箋や調剤録に正しく調剤記録の記入をしなかった場合、50万円以下の罰金に処せられます(薬剤師法第32条第4項)。

実際に取り消し処分を受けた薬局の理由として無資格者による調剤、実際には行っていない指導等の加算を上乗せするものがありました。

また、特定の医療機関との不正な連携をした場合では、実際には受け付けていない処方箋や、実際には行っていない調剤行為について要求するという架空の不正請求が、非常に多かったようです。

このような場合の行政処分は、不正の種類や不正の請求額の高低で決められるのではなくて、その事例の悪質度の高さで個別に判断されるのが通常です。

(薬剤師と医師との癒着の問題)

保健薬局は保険医療機関と構造面、経済面、機能面、どれに対しても独立していなくてはいけません。これは保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則に定められています。

そのため、薬剤師が医師にリベートを与え、見返りとして特定の小胞を依頼することは、同規則違反に当てはまり、行政処分の対象となります。

また、リベートを受け取った医師もまた、保険医療機関及び保険医療養担当規則に違反すると同時に民法上、保健者と患者さんに対して、薬剤師との共同不法行為の責任も負わなければいけないと考えられます。

先述した医師が例えば、公立病院に勤務する公務員だった場合、利害関係者である薬局開設者(薬剤師)との飲食、金銭の授受は、公務員に倫理規程に違反する可能性があります。

もっと言えば、医師と薬剤師の両方が、刑法側の罰則にも問われることになります(刑法197法)。

※付録

最近、薬局に来る患者さんが減少。患者さんの本音調査はどうやって探る?)

A薬局長の薬局は、門前薬局です。処方箋を発行する診療所は患者さんも多く、繁盛しています。なのに今月の薬局患者数のデータを見ると、去年と同じ月を比べれば、患者数が一割以上少なくなっていました。

何故? 患者さんが減った理由がわかりません。調剤ミスもしていなければ、患者さんとのトラブルもほとんどありません。

A薬局長は、大学の先輩であり、市内に5つの薬局を経営しているB氏に相談に行きました。

A 薬局長の薬局がある地区は、門前薬局ではない面分業の薬局が増えていました。そのため、医療機関の目の前という立地の良さに頼ってばかりでは何の進歩もあ りません。一度、A薬局長の薬局が患者さんを満足させているのか一度調べた方が良いのではとB氏はアドバイスしました。A薬局長は他の薬剤師と共に、手が 空いている時は、待っている患者さんに話しかけ、不満や要望を聞き出すようにはしていました。

しかし、患者さんは遠慮があるため、薬剤師にいきなり本音を言ったり、文句を言ったりすることはなかなかできません。そのため、患者さんの本音を知るためにアンケート調査をB氏は勧めました。

「どのようなことをアンケートで聞いたらいいのでしょうか?」とA薬局長は尋ねました。

B氏はアンケートの項目を紙に書きだしました。

①薬の飲み方や副作用の説明などの薬剤師の服薬指導はわかりやすいか

②薬剤師、事務員などのスタッフは患者さんに対して親切に対応しているか

③薬剤師の白衣は清潔に見えるか、事務員たちの身だしなみ、スタッフ全員の言葉づかいはきちんとしているか

④薬剤情報提供書の内容はわかりやすいか

⑤待ち時間は長すぎると感じないか? 待っている間、退屈しないように薬局側の工夫を感じることが出来るか?

⑥薬局は清潔に感じるか? 冷暖房の温度等は適切か

⑦OTC医薬品やサプリメント等について何か容貌はないか

⑧トイレ、出入口、その他、高齢者や障害者で利用しにくいところはないか

これはほんの一例で、アンケート内容は薬局が違えば、変わって当然ですが、上記の内容はどんな薬局でも最低限、入っていることが望ましいです。

また、単にアンケートをするのではなく、何故、アンケートするのかを患者さんに理解してもらうことが必要です。とはいえ、「患者さんが最近減ってきて……」などと本音を書くのではなく、「患者さんサービスの一層の向上に……」というような前向きな書き方で書きます。
アンケートを実施する頻度は少なくとも年に一度は行いましょう。全部の患者さんに実施するのは困難でしょうから、一定野期間を決め、その間に来局した患者さんにアンケートを実施します。

毎 年やるとなると、アンケートの質問を考えるのが面倒だという薬局は、医薬品卸に尋ねてみましょう。このような調査のお膳立をやってくれる卸があります。た だ、アンケートにどんな質問を入れるかをスタッフ全員と話し合うこと自体がすでに「改善」のです。できるだけ、自分たちで考えることをお勧めします。

そ して調査結果が出て、改善すべきところがあれば、必ずやります。でなければ、アンケートを実施した意味がなくなるし、益々、患者さんの数は減っていきま す。それにアンケート調査の結果は他人の意見です。人間は自分のやっていることは正しいと思いがちです。他人の意見であれば、客観的に考えることができ、 反省もします。