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大体の薬剤師が、服薬指導をする時や、薬歴を書く時、まずは薬が頭に浮かび、それから患者さんのことを考えるのではないでしょうか?

その逆のやり方で、患者さんのQOL(Quality of Life)を向上させ。患者さんからの信頼も厚い薬局があります。

薬の副作用等で、患者さんのGOLが下がっていないかを重点に服薬指導を行っています。

何故、そのような考えに至ったのでしょうか?

Y薬局の管理薬剤師P氏にお話しを聞きました。

そのような発想になった理由;薬歴が書けない!

Y薬局のある薬剤師が「薬歴が書けない、」と訴えてきたことがきっかけです。

その薬剤師の仕事態度はよく、医学薬学の知識もたくさん持っています。彼が言うには、「Do処方(前回と同じ処方)が続くと、薬歴に書くことがなくなる」と)訴えてきたのです。

その薬剤師の服薬指導の内容が薬の副作用、薬の効能、注意をどの患者さんにも同じような服薬指導をしていたことに、気付きました。服薬指導は薬に重点を置きすぎると、薬剤師側からの一方的な発信でしかありえない状態になっていきます。

従って、患者さんの情報が得られず、薬歴には新たに書くことが無くなってくるわけです。

いつもDo処方でも、患者さんの変化はどこかにあるはず

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患者さん自身も変わり映えのない生活を送っていたとしても、生活の継続の中で、体調や生活のリズムの変化は,必ずあります。

薬が先ではなく。患者さんの生活状況(食事、便、睡眠、体調など)から入っていけば、患者さんの変化を発見しやすくなります。

その変化が薬の影響からくるものなのかと考えていけば、薬歴に書くことがないということはありえない筈です。

薬がメインではなく、患者さん自身や患者さんの生活状況がメインになることで、服薬指導の幅が広がるのではないかと考えました。

患者さんの生活の基本を薬歴に書き出す

患者さんから聞き出した食事、睡眠、排泄などの情報を記録に残すことから始めていきました。

患者さんへの質問の内容は「食事は美味しく食べられますか?」「何時に起きて何時にお休みになられますか?」など。

尿や便は一日の回数を聞き、薬の影響が出ていないかを確認し、そのことを薬歴に書きます。

食事の状態で副作用の有無がわかる

患者さんの日常を細かく見ていけば、薬のことは数珠つなぎで色々、わかってきます。

具体的に言うと、患者さんが「食事がおいしくない」と言った時、味覚障害、吐き気、口渇などの副作用を発見できることがあります。

患者さんは副作用であるという意識は薄くても、生活が何となく不自由になっていることは、敏感に感じ取っています。

薬歴に「変化なし」という言葉は、書いてはいけない

Y薬局では、薬歴を核に当たって、特別なルールはないけれど、「変化なし」という言葉を書くのは禁止としています。

「変化なし」だけでは何に対して変化がないのかが不明です。

前回と同じであっても、確認したことは「食欲はある」「便通は良好」などと書き、確認したということをはっきりとさせておくことが重要です。

このような日々の記録が、患者さんの体調の変化を掴み易くするのです。

Y薬局の薬歴の書き方の実例を紹介

80歳代の男性患者さん;処方薬はUFT(抗がん剤)カプセルなど

薬剤師は薬歴に「食欲+、便通+ 睡眠+」と書いています。

がん患者さんの場合、食事量が減ると、体力低下が著しく、体力低下から、病状悪化を招くので、重要な質問事項です。

2週間後、前回と同じ食事の質問をするのですが、

「残さず、全部食べていますか?」

「美味しく食べられてますか?」

などと、今度は食事の量や味覚の変化などを確認し。味覚異常などの副作用をチェックしています。

薬の副作用で口渇になり、入歯の装着が困難になる場合があります。実際に、口渇が原因で入歯の装着が困難となり、食欲低下を招くようであれば、主治医に薬の変更の疑義照会をしなくてはいけない可能性も出てきます。そして疑義照会をしたら、必ず、薬歴に書き込みます。

薬剤師にとって、患者さんからの最初の情報は処方箋です。そこには病名など書いてありません。しかし、生活の中に不都合な点がないかという視点から入っていけば、病名はわからなくても服薬指導はできます。

また、がんなど、病名を聞き出しにくい患者さんに対しても、このようなやり方であれば、十分に患者さんのサポートは可能です。

60歳代の女性;処方薬は高脂血症治療薬や(睡眠薬など)

薬歴を見ると、薬剤師はまず、尿の色の変化や脱力感を確認しています。これは高脂血症治療薬のアドルバスタチン製剤の副作用をチェックするための確認です。

その日に確認できなかったことは、次回、確認するようにという内容を薬歴に書き添えています。

主に睡眠について尋ね、患者さんは日中の眠気を訴えていることが書かれています。

睡眠薬常用の患者さんが夜間にトイレに行こうとする時、ふらついて転倒することもよくあるので、「次回、確認」と薬歴に書いてあります。

このように生活状態を確認することで薬の副作用だけでなく、薬の効果も把握できます。

「飲み忘れはないですね?」などと言うありきたりな定番の質問では、何も患者さんから聞き出すことはできません。

60歳代のパ—キンソン病の男性患者さん:パーキンソン病治療薬など

薬剤師はまず、「手の震えはどうですか?」という質問をし、薬歴には震えありと書いています。

素の質問を何回か続けた後、「食事はどのようにして食べているのかを質問。患者さんが「以前は、手が震えて箸が持てなかったが、今は持てるようになった」と、話したことが薬歴に書いてあります。

ここではキーワードを「震え」から「食事」にしたことで、薬の効果があったことが確認できたのです。

「お薬はよく効いていますか?」などと言う質問であれば、やはりこのような情報は得られなかったと考えられます。

箸を使うことができるようになったことが嬉しいという気持ちを、薬剤師はわかってくれたということを患者さんは認識できます。

自分のことを我事のように喜んでくれる人がいるというのは、患者さんにとって病気と闘う志気を否応でも上げてくれるものです。

患者さんの日々の暮らしに注目してQOL向上を共に喜び、変化と薬を結び付けて考えられる薬剤師の存在は、患者さんにとって欠かすことができない人間の一人になるのではないでしょうか?

まとめ

薬歴の記載は、薬剤師の重要な仕事の1つです。

今、薬歴の未記載が問題になっています。薬歴簿は、薬から書くのではなく、患者さんの日々のQOLを上げる工夫をすることに重点を置きながら書いていきましょう。

QOLが下がれば、そこに薬が介在している可能性があると考えていけば、「薬歴に書くことがない」ということは起きないに違いありません。