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血圧に関して素朴な疑問を持った患者さんが多くおられます。

その疑問の中でも、患者さんの半数が疑問に感じていることを取りあげてみました。

1 医師の前で血圧を測ると、上がるのはなぜ?

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「自宅で血圧を測ると、全く普通なのに、先生の前で測るといつも高くなるので嫌になるんです……。」

こんな経験された方も多いことでしょう。

患者さんは、医師から辛い検査をやるからとか、検査結果がよくなかったことを報告されるのではなどと、自分にとって不利益なことを言われるかもしれないと不安で胸がいっぱいになります。

あるいは医師が、これから自分に痛い治療を施すのはないかと思うと、胸がドキドキしてきます。

このような精神状態になると、交感神経が優位になって、血圧が上がります。

医師のほうもそのことはわかっており、血圧が高めに出てしまった場合、時間を2分程度おいてから、2~3回測り直します。患者さんはその間に緊張も解けて、元が正常な血圧であれば、正常域に戻ります。

この頃は、医師ではなくて、看護師が血圧を測ることが多いです。看護師のほうが、医師よりも患者さんはリラックスできるようで、血圧の変動はあまり見られないようです。ただ、男性の患者さんは看護師が美人だったり、自分好みだったりすると、血圧がグーン上がるようなので、要注意です。

このように血圧はちょっとしたことで簡単に上がってしまいます。病院に予約時間ぎりぎりについてしまい、急いで中に入り、息を整える間もなく、血圧を測ると、交感神経が優位になり、血管が収縮、その結果、血圧が上昇します。

2 寒いと、血圧が上がるのはなぜ?

気温が下がり、寒くなると、体外に熱が出ていき、体温が下がらないように、皮膚血管が収縮して熱の放散を防止します。

血圧の高さは、(心拍出量)×(総末梢抵抗)で計算できます。

つまり、寒くなり、皮膚血管が収縮すると、その分だけ総末梢抵抗が増えるので、それに従って血圧も上がるということになります。

3  太ると、血圧が上がるのはなぜ?

太るだけでも、血圧は上昇するのですが、これに糖尿病、糖尿病予備軍が加わったメタボリックシンドロームになっていると、血圧はさらに上がりやすく、心筋梗塞や脳卒中などを起こしかねない心血管病変が、出現しやすくなります。

肥満は、脂肪細胞数と脂肪細胞への脂肪蓄積の増加が原因で起こります。

脂肪細胞の中でも特に内臓脂肪の細胞では、アンジオテンシンノーゲンという遺伝子の発現が亢進しています。アンジオテンシンノーゲンがどんどん放出されると、レニン・アンジオテンシン系の活性が上がってきます。アンジオテンシンは血管を収縮させると同時に、腎髄質からのアルドステロンの分必を促進します。

アルドステロンは腎臓でのナトリウムの再吸収を促進し、結果として水分も再吸収されるため、循環血液量が増加します。循環血液量が増えれば、心拍出量も伴って増えるので、前述した(血圧=心拍出量×総末梢抵抗)の関係から、血圧は上がります。

アンジオテンシンの直接的な血管収縮による血管抵抗の上昇がそれに拍車をかけ、さらに血圧は上がっていくことになります。

また、脂肪細胞からアルドステロンの分必を促進させる物質も、分必されていると言われています。

減量するということは、脂肪細胞への脂肪の蓄積を減らし、肥満によって亢進していたレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性が下がるため、血圧が下がるということになります。

4  右腕と左腕で血圧に差があるのはなぜ?

ここでは最高血圧について紹介いたします。

現在、自宅に血圧計を置いている人は多いですよね。家では通常、上腕に血圧計とつながれた圧迫帯を巻き、そこに空気をどんどん送っていきます。上腕部が締め付けられていき、上腕動脈が上腕骨に押し付けられるような結果になり、血管が閉塞し、血流が止まります。

この状態から、今度は圧をどんどん抜いていきます。血流が再開した時の値が上の血圧(最高血圧)です。最低血圧については省略いたします。

上腕に巻く圧迫帯の幅は、成人の場合は12.5cmと決められています。子供は腕が成人よりは細く、年齢に合わせて色んな幅の圧迫帯を使います。

成人の場合は、腕の太さに関係なく、同じ幅の圧迫帯を使いますが、腕が太いほど、筋肉や脂肪が多く、圧迫する圧力が周りに漏れてしまいます。そのため、動脈を閉じさせるためには高い圧力が必要になります。従って、腕が太い人ほど、この方法で測定された血圧は自裁よりも高くなってしまいます。

自宅で測れる血圧計は、誰でも測れて便利なものですが、このような誤差がでてしまいます。

 

ここまでのことをご理解頂き、ここから皆さんの疑問に答えていきたいと思います。

実際のところ、右腕と左腕の血圧の差はありませんが、前述したように腕の太さが左右違えば、血圧に差がでてきます。筋肉が発達して太いのは、利き腕のほうです。特にテニス、和弓など利き腕をよく使用するスポーツをやっている人の腕の太さは左右、かなり違います。

そのため、利き腕では上腕動脈を閉じさせるのに圧力が必要以上かかってしまい、血圧としては実際よりも高い数値が出てきます。

ただ、左右差があるといっても、そんなに差はなく、5~6mmHg程度です。この左右の差が20mmHg以上あった場合、本当に左右の腕の血圧に差があったと考えます。

右側は大動脈から腕頭動脈が枝分かれしていて、これが右総頸動脈と右鎖骨下動脈に分かれて上腕動脈に続きます。

一方の左側では、大動脈からいきなり左総頸動脈と左鎖骨下動脈が分岐します。このような血管が大動脈から分岐する部分で炎症が起こり、大動脈壁が肥厚してしまうことがあります。左腕の血圧は、低くなってしまいます。

 

この病気は自己免疫疾患の一つである大動脈炎症候群と言われ、若い女性にみられます。

大動脈炎症候群は別名、発見者の名字をとって高安動脈炎とも言います。大動脈や分岐

動脈である鎖骨下動脈など、冠動脈、肺動脈が炎症をおこし、血管の内腔が狭くなったり、つまったり、または拡張したりすることで四肢、臓器に血流障害の症状がみられます。20歳代の女性に好発します。

最初は原因不明の炎症が続き、虚血症状など血流障害が出始めた頃に、大動脈炎症候群と診断されることがありますが、できるだけ想起に本疾患を疑うことが重要です。