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医薬分業がまだまだ、未来の話だった頃、地方の薬局の調剤室は約100年に渡って、注目されず、日陰の存在でした。

肝心の処方箋が来なかったので、薬剤師のスキルを最大に活かせる調剤室が冷遇されても仕方がないと言えるかもしれません。

そして、医薬分業が始まり。調剤室をフル稼働するようになりました。

しかし、薬剤師の関心は薬歴を書くこと、服薬指導、情報提供などに注がれ、調剤室のレイアウトなどが話題に上ることはそんなになかったように思います。

病院の外来調剤と同レベルのシステムや技術を持ちたいと考えてはいるのですが、考えるだけで地域薬局独自の進歩が止まっているようにしか思えない時期もありました。

センスのある外装や薬局内部を感じることはあっても、調剤室に個性があるなどと感じたことはありません。

これから調剤室の一工夫についてお話ししてみたいと思います。ただ、薬局の事情がそれぞれ違うため、役に立つかどうかわかりませんが、調剤室考え直す契機になればいいなと思っています。

昔の薬屋さん

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はるか昔、戦後が過ぎ、人々が希望を持ち、前向きに生きていた頃、当時の医師会会長であった故武見太郎氏は医薬分業論争の時、「雑貨で積み上げられた調剤室の奥から、調剤した薬が出てくるような状況では、患者さんや医師は薬局の調剤を信頼しない。信頼されなければ、医薬分業は制度として進展しない」と一喝されたとか。

昭和37年、M薬局が調剤部門のみの薬局(調剤薬局)を創ったのは、「街の薬局でも信頼できる調剤を行うことができます」ということを、世間に理解してもらうための試みだったようです。

医薬分業をほとんどの社会が受け入れるようになった現在、患者さんから心底に街の薬局の調剤室で調剤してもらいたいと考えて来られているのでしょうか?

家から近いからとか、門前薬局であるからということが選択基準になっていると思われます。

地域薬局のお手本

数年前から、D氏はM薬局の代表として、ヨーロッパの薬局を視察してきました。

さすが、視察させてもらえるだけあって、どこの薬局の調剤室も個性あふれ、とことん磨きあげられているのには驚きました。

調剤権をめぐる戦いに勝ちぬいてきた薬局の重厚さと洗練された機能美がうまく重なり合って「こういう薬局なら患者さんに選ばれ、信頼され続けるだろう」と感心しました。

ただいくらステキな調剤室だからといって、そのままマネをするわけにはいきません。欧州と日本は歴史、文化、法律が異なります。

高い評価を得ているヨーロッパの薬局の調剤室の概念を参考に、独自の概念を創り上げる必要があります。

なぜ、ヨーロッパの薬局は魅力的に見える?

ヨーロッパの薬局もほとんど個人所有のものです。ヨーロッパでは地域薬局が一元的に薬剤の供給を担当しています。

従って、薬局の質が薬剤供給体制に直接、影響してくるのです。そのため、調剤室を清潔で効率よく管理していくことが、地域薬剤師の役割で誇りなのです。

日本でも薬剤師がプロフェッショナルを意識して、地域の薬を適切に管理していることを消費者や患者さんに主張することが医薬分業を制度として支持してもらうのに重要なことであると考えられます。

調剤室のイメージづくり

調剤室で最も重視すべきことは機能的であること。薬局を新築、改築する時は、少しでも患者さんたちに自分の薬を「まかせられる」調剤室と認めてもらわなくてはいけません。

機能を追求した良い調剤室は使い勝手がいいでしょう。しかし、はたから見れば、グレー、アイボリー系のスチール製什器などがせっかくの機能美を台無しにしていることがあります。

その他、薬の箱を床や棚の上に積み上げてしまい、薬局の管理能力に対してダメージを患者さんに与えています。

要するに、見た目、特に患者さんのいる待合い室から見える調剤室を考えるのです。

地域の薬局も調剤室は薬剤師のスキルの要と患者さんに思ってもらうための重要な要素です。

※機能美

レイアウト等が適切で薬剤師の調剤業務がスムーズに流れている薬局は、機能的な美しささえ感じさせてくれます。

薬の大小の箱が整理整頓され収納されていること、調剤器具が散らばってなく、常にきちんと並べられていること、これらのことも機能美作りに重要なポイントです。

その上に高い衛生環境が感じられると、患者さんの安心感につながります。

※薬局の個性

薬局の主張が感じられるような統一感が備わっているとなお、薬局のイメージづくりがしやすくなります。

そこに専門性、そして温かみ、親近感といったような地域性まで考えられると、他の薬局とは違った個性が自然と出てきます。

※システムキッチンを土台にして

調剤室のイメージを良くするにしても費用をかければいいというものではありません。空間とコストは限られています。

その中で機能とイメージを実現していかなくてはいけません。

一つの提案ですが、什器をシステムキッチンに似せると、構想が広がります。台所と調剤室を同じレベルで考えるのはどうかしらと考える人もいるかと思います。

しかし、システムキッチンは、コスト、収納力、見た目、耐久性、多い選択肢などを考えると、調剤室、特に広くない空間に使用するのはとても有用です。

調剤室=調剤専用什器という、従来の観念を振り解き、もう少し視野を広げて考えてみるのもいいかもしれません。

働きやすい調剤室とは?

地域の薬局の調剤業務の量は、確実に増えています。

そのため、今までは十分な広さと感じていたのに、手狭に感じるようなった薬局も多いと思います。

では広ければ、効率が上がるかと言えば、そうでもありません。今まで3歩で薬を取りに行けたものが、8歩も歩かなければいけなくなると、効率が悪くなります。

つまり、航空機のコックピットのように必要な作業が最小限のスペースでできるようなレイアウトされた調剤室が理想的で働きやすい調剤室と言えます。

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調剤業務のしやすさ、調剤効率の良さはそのまま調剤ミスの防止につながります。

そして調剤に一定の手順を決めれば、薬剤師がお尻や肘をぶつけあったりして調剤をすることもなくなるはずです。

当然、調剤時間も短縮される、患者さんの待ち時間も短縮されるというように相乗効果で問題が解決していきます。