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「個別指導」の言葉に思わず顔をしかめたくなる薬局薬剤師達。

いつかは指導の順番が、回ってくるようになっていますが、やはり、それが現実となると怖い……。

どのような経緯で個別指導が行われるのか、フィクションで紹介いたしましょう。

個別指導を行うのは厚生労働省が行います

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個別指導は、厚生労働省保険局長通知の「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」に従って、行われます。これは日本全国で行われていることです。

ただ、都道府県によって、やり方がそれぞれです。

それは、地域の状況が違うためでもあります。状況に合せた指導が行われたり、悪質な薬局に対しては、厳しい指導が行われるなど、指導を受ける薬局側の状態、指導官側の性格等で弱冠、指導方法が変わることがあります。

どこの薬局が個別指導に選ばれるかというのは、地方厚生支局によって設けられた選定委員会で決められます。

基本的に薬局が提出した調剤報酬明細書の一件当たりの平均点数が高い薬局が選ばれます。

個別指導の通知が来た!

まず、指導日の約3週間前に厚生支局から郵便で、個人指導通知の封書が薬局に届きます。

A薬局は大学病院からの処方箋が頻繁にあり、患者さん達も難病が多く、一人あたりの薬剤費の平均も結構、高めです。

そのため、いつか個人指導があると、A薬局のX管理薬剤師は予測してはいました、きちんと調剤、服薬指導を行っていて、不正請求もなく、何1つ疚しいことはないと思うのですが、いざ、指導の通知がくると、心穏やかではありません。

指導官の指摘が怖い

個人指導では、患者さん達の薬歴簿を見ながら、「ここはおかしい」「この指導方法はよくない」など、指導官から一々、指摘されます。

おかしなところが発見され、何百万円と返還させられたり、最悪の場合、保険薬局を取り消されたところもあると噂で聞いたこともあります。

もし、A薬局が多額の返還を求められた場合、X管理薬剤師のボーナス、給与も減らされるのだろうと、よからぬことが頭を過ります。

個人指導に出席する者

郵便で届いた通知書には、個人指導日の日程が書いてあり、薬局側からの出席者は開設者、管理薬剤師、そして事務責任者も出席するようにと記載されています。

持参するものは、処方箋と薬歴簿30人分、業務日誌などです。

どんなことを質問されるのかと、以前、厚生局から委託され。指導官をしていた薬剤師に知り合いがいたので、X管理薬剤師は聞いてみました。

各地方厚生局のホームページに「個別指導での主な事項」という記事を教えてくれました。

その記事には、かなり細かい指導内容が記されていて、X薬剤師は、自分達の薬局はこのすべてをクリアしているのかと、不安になってきました。

持参する薬歴簿の対象患者さんの名前はいつ、知らされる?

指導日の4日前と1日前に15人ずつに分けられ、ファックスで街頭患者さんの名前が送られてきます。

薬歴の期間などは、都道府県によって対象患者さんの一年分とか、全記録とか違ってきます。

指導日前日にX管理薬剤師が行ったこと

個別指導に持って行く薬歴、処方箋に該当する患者さんの名前が全てわかったので、それぞれの患者さんの薬歴簿、処方箋を抜きだしました。

その後、患者さん、一人一人の薬歴簿を入念に見直しました。

患者さんの処方箋の日付と薬歴簿の日付が合っているかなどという基本的なことから、処方薬の副作用、相互作用などの記載を確認、疑義照会の内容、その後の対処の仕方など、納得のいく形で書かれているかを確認していきました。

確認しながら、知り合いの元指導官だった薬剤師の「個別指導は、準備の段階から始まっている」と言った言葉が頭に過ります。

「薬歴簿に不備があってはならないけれど、もっと重要なのは。患者さんの個々の状況に合せて、薬剤師がどれだけの服薬指導ができているかということも質問してくる」と話してくれました。

すでに記載されてしまった薬歴簿には、もう手が付けられないけれど、指導官の質問には的確に答えられるようでなければいけないと、X薬剤師は肝に銘じます。

いよいよ個人指導の日到来!

名前を呼ばれて部屋に入ったX管理薬剤師とA薬局の開設者である社長、A薬局の事務担当者。厚生支局側はスーツ姿の男性が4人。

X管理薬剤師達が座る椅子は、男性達と向き合う位置にありました。

かなり緊張しました。社長でさえも手が少し震えておりました。目の前に坐っていた男性の一人から、かなり丁寧な口調で健康保険法等に基づく個別指導に協力したことへの短い挨拶がありました。

その後、4人の男性が1人ずつ自己紹介をしました。指導官の薬剤師、厚生局の事務官2人、立会人として薬剤師会の理事。

事務官が開設者に薬局の住所、開局時間、管理薬剤師、スタッフの人数を質問しました。

その後は調剤の流れを説明するように求められ、X管理薬剤師が緊張の面持ちで答えました。

次は薬歴簿のチェック 緊張の度合いはMAX

まず、血圧の薬が過量ということで疑義照会をしていないことを指摘されました。医師と連携ができており、疑義照会して医師に忙しい思いをさせることも無かろうとしなかったのだと説明したのですが、それは指導官には通用しませんでした。

とにかく、添付文書以上の量が書かれてあれば、どんなことでも疑義照会して、その都度、薬歴簿に記載することと注意されました。

わかっていることを一々、疑義照会して互いを忙しくすることもなかろうと反論したくなりましたが、ここで指導官ト喧嘩しても有益ではなかろうと思い、反論はしませんでした。

その他、細かく、いくつも質問されましたが、「あー、記入を忘れていた」というような単純なものよりも、担当医師との関わり方を知る薬剤師の意見をあまり聞かず、薬歴簿の上だけであらゆる判断をしようとする薬剤師の指導官に違和感を覚えました。同時に誰が見てもわかる薬歴簿の書き方を追求していかなくてはいけないとも思いました。

また、さらにつっこむと面倒なことになりそうで、素直に「改めます」と言いました。

これからは指導官の指導に従ってやらなくてはいけないけれど、薬剤師の許される職域の狭さを感じた長い2時間でした。

個人指導日から約3習慣後

厚生支局から郵便で結果通知書と個別指導指摘事項書が入っていました。

結果通知書には調剤内容等に適正を欠く部分があったが、調剤担当者の改善が十分、期待されると考え、経過観察として取り扱うというような内容が記載されていました。

この後、一カ月以内に改善報告書を厚生支局に提出しなくてはいけません。

 

個別指導が無事に終って、ホッとはしましたが、釈然としない部分は以前と残っています。

それでも、保険調剤の基本に戻り、薬歴簿の記載や処方箋の取り扱いを徹底させる気持ちにさせるには、有益な個別指導だったとはいえます。