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近年は、長期処方の増加やジェネリックへの代替調剤などで、どうしても薬局の在庫は過剰気味になっています。

特に、中小規模薬局の調剤室は手狭です。このまま何の整理もせず、対策を打たなかったら、調剤室が薬で埋め尽くされるのは時間の問題。

期限切れで廃棄しなくてはいけなくなる薬も増えてきます。本当にこのままでは、薬局の経営は圧迫していきます。

こうした悩みを解決し、独自の工夫で在庫整理に成功した薬局を紹介します。

発注は全員参加で、欠品、過剰在庫を調整

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薬の発注を一人にまかせると、どうしても発注の方法に偏りができてしまいます。

また、発注の担当者がいないと、発注しづらいなどといった問題点が出てきます。

E薬局は、調剤業務などの合間に薬の不足に気付いた人が薬の発注ができるようなシステムに変えました。

そのため、欠品や過剰在庫を減らすことができたと言います。

発注全員参加の方法

E薬局もそれまでは担当者を決めて発注業務を行っていました。

担当者の負担を減らし、欠品、過剰在庫に対して、細かく対応していくため、薬剤師全員が発注に参加できるような業務の流れにしました。

薬の名前を書いた発注カードを調剤棚に差し込んでおき、在庫量がある一定量以下になったところで、それに気付いた薬剤師がかードを抜き出し、それを、きめられた箱の中に入れて業務終了後に、その箱の中に入った発注カードをまとめて、卸に注文します。

このような方法になって成果はいかに?

上記のように薬剤師全員が関わるようにしたことで、一カ月の応需処方箋枚数が約1500枚で1100品目を常に備蓄していますが、月末の棚卸しの時の在庫を750万円から600万円の程度に減らすことができるようになりました。

また欠品による卸への急ぎの配達も無くなり、一日約45分かかっていた発注業務も30分以内で終わらせることができるようになりました。

長期処方やジェネリック対応による在庫管理の問題点

行き当たりばったりで注文していると、欠品で患者さんに迷惑をかけてはいけないという思いから、つい必要以上に注文してしまうことがあり、過剰在庫の原因を作ってしまいます。

何もせずにそのままにしていると、在庫金額が一カ月医薬品使用金額よりも3~4割ぐらい多くなってしまうことがあると、E薬局の管理薬剤師は言います。

そのような傾向にさらに火をつけてしまうのが長期処方箋です。90日や120日のような長期処方箋の患者さんが重なれば、もっと欠品が出易くなります。

いつもかつもそうではなくても、3、4か月先の薬を患者さんに迷惑をかけないようにと早めに注文してしまうこともあり得ます。そして、そのような積み重ねで、在庫が増えてしまうわけです。

また、そこにジェネリック医薬品への対応もあり、従来の先発医薬品の在庫も考えると、かなりの品目数を薬局は抱えることになります。

そのようなことから、このまま放っておけば、過剰在庫に確実になっていきます。そこで、前述した「発注は全員で」というE薬局の方法のメリットをもう少し詳しく追及してみましょう。

発注は全員参加型で

発注の担当者を一人にした場合、まず、1000品目はある備蓄医薬品の全てを短時間でチェックしていくのは、非常に困難なことです。

1000品目以上もあれば、発注のし忘れや発注のタイミングを間違えることもあります。このことは、最終的に患者さんに迷惑をかけてしまうことになります。

そこで発注の方法を一定のルールを決めておきます。薬剤師全員が調剤業務を行いながら、薬の残量を確認し、発注すべきものはピックアップしていきます。

この方法であれば、複数の目でのチェック機能が働き、少しでも発注漏れを防ぐことが出来るようになります。

また、わざわざ欠品を探す時間をとる必要もありません。

全員参加型の発注方法にしたことで発注漏れを防ぐことが出来るようになった薬局は多いですが、上手にやっていくためにはいくつかのポイントがあります。

薬棚と在庫医薬品をストックする箇所の整理

まず、未開封、開封後の同じ薬は同じ場所に保管して、在庫の状況が一目でわかるようにしておきます。そうすることで、発注した薬が別のところから出てくるというような事態を避けることができます。

これは過剰発注の防止や発注業務時間の短縮にもつながります。どの時点でどれぐらいの量を発注するかを決めておくことも重要です。

例えば、E薬局は「過去3か月の一日最大使用量の2倍を下回った時を」と決めています。

何故なら、発注した翌日にはその薬が届くため、2日分を在庫しておけば、欠品にならないからです。

ただ、患者さんの処方箋内容は、季節や治療方針の変更などで変わることがあります。そのため、発注量は時々、見直さなければ、過剰在庫の原因になります。

このような時のために、発注カードに発注履歴も書いておくと便利です。

別の薬局は、薬の包装箱を利用して発注の調整をしています。開封したら、その箱を一定場所に集めておき、一日の業務終了時に、それらの箱の品目を発注します。使用した分だけ補充していくというシンプルなやり方ですが、在庫量を一定の範囲内におさめることができます。定期的に出る薬ならこの方法で十分、間に合うようです。

一日の応需処方箋枚数が、約280枚で備蓄品目数が約1000品目の薬局ですが、このやり方でいくと、欠品が一カ月に一回あるかないかで済んでいるようです。

このやり方は最初に決定した在庫量を基準とするので、定期的に見直すことが重要ですが、簡単に始められるので、どこの薬局でも参考になるかもしれません。

発注業務は全員でも項目毎の責任者を立てる

例えば、発注担当、欠品チェック担当、デッドチェック担当という感じです。この方法をとっているのはH県で35店舗の薬局を経営するK産業。

  1. 在庫回転期間……在庫を一回転させるのにどのぐらいの期間を要したかという数値(月末における在庫薬品の総薬価を一カ月使用した医薬品の総薬価で割った数値;例えば、1なら一カ月で在庫が一回転した)
  2. 欠品率……受付回数に占める欠品の割合
  3. デッドチェック率……数か月、例えば3か月以上、使用していない薬の総薬価が全在庫薬価に占める割合

上記3つを指標にしたデータをグラフにし、各薬局に毎月一回、配布しています。

これらのデータを基に各薬局が発注業務に色々、工夫を凝らし、在庫の適正化に効果を上げています。

そして、それぞれに担当責任者を置き、在庫に対する意識を高めたことで、薬剤師全員が、過剰在庫や欠品を減らす努力をするようになったとK産業の社長は言います。

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全員参加型の発注をさらに一歩進めた方法を紹介します。

月末在庫を最小量に抑える

S薬局は内科専門病院の門前薬局。一日応需処方箋枚数は約90枚。備蓄品目数は約800品目。

日によって発注量を変え、発注回数を極力減らし、同時に毎月末の在庫量を最小限に抑えることに成功しました。

S薬局も【24】で紹介したようなカードを使って発注業務を行っていました。

これだけでも毎日の業務はスムーズに流れはしたものの、S薬局の管理薬剤師は、一カ月の間に何度も同じ薬の発注を繰り返してしまい、手間がかかる、また月末の在庫量が月によって違う場合があるなど、この方法の限界を感じていました。

応需処方箋の枚数や処方箋の内容などにそうそう、変化があるわけではありません。従って、医薬品を品目ごとに見て、毎月の使用量にそんなに変化はありません。

それがわかっていれば、できるだけ月初めに一回にまとめた発注で済ませ、月末には在庫が最小量になる方法はないかと考えました。

実際には月の途中で在庫が切れてしまうので、必ずしも発注は月一回のみとはなりません。

しかし、月の下旬にも上旬と同じ量ほど発注していたのでは、月末の在庫量は増えてしまいます。

そこで管理薬剤師が考えたのは、発注日によって発注量を変える方法を考えました。

発注日によって発注量を変える方法

ある量を下回ったら必ず発注するという最小在庫(発注点)を決めます。この量は卸の配達を考慮して3日分としました。

ただ、処方箋を出す病院はある曜日になると、特殊外来になり、特定の薬が多く処方されます。

そのため、3日使用量の過去3か月間の最大量を調べ、それを発注点としました。

次に一カ月の予定使用量の薬を毎月1日に発注し、月末には最小在庫になるように予定を立てました。

例えば、月の使用量が3000錠とすると、1日に発注するのであれば、3000錠、15日なら1500錠を発注します。

S薬局は既存のデータベースソフトに管理薬剤師が自作した発注業務システムを組み込み、その日の発注量を1品目ごとに自動計算ができるようにしてあります。

このシステムを入れる前は、月末の在庫の総薬価が最小在庫薬価の倍以上でしたが、この方法にしてからは、最小在庫薬価とほぼ同じぐらいになりました。

S薬局の管理薬剤師は「多少の微調整は必要ではありますが、通常では、手間をあまりかけずに、毎月の薬剤購入量と在庫量を一定に揃えることが可能になりました」と言い、業務短縮にも貢献しているようです。

処方箋が増えることは有難いことだけど…

皮膚科診療所の門前薬局であるG薬局。開局当初は皮膚科診療所の薬を主体に揃えていればよかったのですが、だんだん、他の病院の処方箋も応需するようになり、欠品や不動在庫が増えてきました。

処方箋が増えることは大変有難いことなのですが、処方箋の在庫が無かったり、長期処方がきても、日数分の薬をすぐに準備できなくて、患者さんに叱られたことしばしば。

そのため、G薬局は、在庫に無かった薬を急いで発注したり、長期処方をクリアできるほどの量の薬を準備していたら、一時は薬の購入費が保険請求金額の1.2倍に膨れ上がってしまいました。

又、年度末に行った期限切れの薬の調査結果は、100品目に達していたようです。そのうち、備蓄医薬品が増え、発注業務にも時間がかかるようになってしまいました。

このあたりで、やっとこのままではいけないと対応策を考えるようになりました。

年度末の廃棄医薬品を100から10品目減らすことに大成功!

まず、発注のミスなどで不必要な薬を納品していないかチェック。全ての薬に付けている発注履歴カードの書き忘れなどないように記載の充実を心がけました。

薬剤名や発注履歴だけでなく、卸会社名、規格を記入。カードも卸ごとに色分けをしました。この方法で発注ミスがほとんどなくなりました。

そして、長期処方の患者さんの次回来局日を明確にし、来局直前にその患者さんの薬を発注できるように一年の予定表を作成しました。

また、12か月分のクリアファイルを準備して、処方箋のコピーを次回来局予定の月のファイルに入れておきます。

月末には必ず、翌月のファイルを見るようにして、翌月のファイルの処方箋のコピーが入っていたら、薬を揃えておくようにしておく、このような方法で欠品をふせぐことができるようになり、欠品防止のために早くから発注する必要もなくなりました。

使用品度の少ない薬について

このような薬は不動在庫になりやすく、管理が難しくなります。G薬局は、ある卸が薬局の在庫負担を軽減するためのサポートプログラムを利用しています。特に回転率の悪い100品目を対象に利用していきました。

このプログラムは使用実績から需要予測した量が自動的に納品されるので、欠品になったり、不動在庫を生じることもなくなりました。

棚卸は半年ごと行います。その半年間の間に、調剤をする機会が無かった場合、開封していなければ、返品し、開封していれば、他の薬局などに小分けするなどして、不動在庫をへらしていきました。

このような対応策で、薬剤購入費は薬剤の保険請求額が上回ることがなくなりました。

その他の事例

その他にも薬の在庫を毎日、業務終了後に厳密に調べ、管理することで在庫を半分近くまで圧縮できた薬局もあります。

2年前、実在庫量と予測在庫量が食い違ったことがきっかけです。その薬局の管理薬剤師の提案で、在庫管理システムのソフトを使って、一日に使用した理論在庫量を帳票に出せるようにしました。

理論在庫量と実在庫量に差があると、その原因究明をしていくため、薬剤師達の緊張感も高まり、調剤ミス防止にもつながりました。

適切な最小在庫量の決定は、難しいとされています。ちょっとした隙に、たちまち欠品を生じやすいからです。

しかし、毎日の棚卸で薬の出入を把握することができれば、経験で養われた勘で適正量を決めることができます。

使用頻度が低い薬は、他の薬局から必要分だけ薬価購入しています。また、期限が近くなると、その薬を必要とする薬局に3割減額、さらに期限が近づいた薬は薬価の半値で売っています。

自分の薬局にそのまま眠らせていたのでは、全く無用で終ってしまいますが、少しでも現金に換えておくことで、減益を防ぐことが出来ます。