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調剤過誤とは、処方せんや薬剤のラベルの読み間違いなど薬剤師の何らかの過失によって調剤薬や配合量に誤りを起こしてしまうことや、薬剤師の説明不足や間違った指導により健康被害が起こることを指します。

調剤過誤のニュースが流れる度に、薬剤師の心は騒ぎます。なるべく耳にしたくはないニュースです。

示談金を支払ったケース

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マスコミやTVを賑わすほど大きな調剤過誤で、患者さんに示談金116万円を支払ったとそこの地元の新聞で報じられたことが、過去にありました。

外用剤の処方せんの患者さんに薬剤師は、別の患者さんの薬である向精神薬を渡してしまいました。

外用剤の処方せんの患者さんはその薬を飲んでしまい、意識不明となって病院に運び込まれたということでした。

このようなケースは患者さんの服薬指導の時に気付くはずです。ということは、調剤過誤を犯した薬剤師は、服薬指導をしなかったということになります。

重大事故では、刑事責任追及もあり得ます

医薬分業先進国のアメリカでは調剤過誤をおこした薬局に、裁判所から10億円を超える賠償命令が出されるケースは珍しくありません。

日本薬剤師会の会員が加入できる薬剤師賠償責任保険の保険金額は医薬品等の場合、Ⅰ事故あたり1億5000万円」が上限です。

それを上回る賠償額の支払いを求められれば、薬局が倒産してしまうことは十分、考えられます。

また、金銭の問題ばかりでなく、薬局の調剤過誤が原因で患者さんが亡くなられたり、植物状態になったりすることがあれば、刑法の業務上過失致死傷罪に問われる、あるいは薬剤師の免許取り消しなどの行政処分もあり得ます。

調剤過誤を未然に防ぐ5つのポイント

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下記のポイントは、調剤過誤のミス防止に取り組んでいる大規模病院や薬局が、患者さんに薬を手渡す前の処方監査の段階で起きた調剤のヒヤリ・ハットの事例を集めて分析したものです。

他の病院や薬局でも実践できる調剤ヒヤリ・ハット防止策をいくつかご紹介します。

1.危険な薬は別に扱う

身近にあるハイリスクな薬は、経口血糖硬降下剤、不整脈薬、抗癌剤などです。

このような薬は間違えると、患者さんの身体へのダメージが大きいだけに細心の注意が必要です。

危険な薬は、アイウエオ順等の調剤棚ではなく、別に集め、抽斗にしまいます。この効率の悪さが、逆に危険な薬を使用したと薬剤師の頭に刻み込まれ、ミスを未然に防ぎます。

患者さんの処方せんを受け付けた薬剤師は、処方せんの中に危険な要注意な薬を見つけたら、小さい付箋紙をその薬剤の横に貼っておくという方法もあります。

2.見た目が似ている薬剤は離して陳列

薬剤師は忙しくなると、つい外観から薬を選んでしまうこともあるので、ヒートシールやパッケージが似ているものは同一視野には入らないよう、引き離して陳列します。

3.散剤は数度確認して

散剤は混ぜてしまえば、処方監査ができるのは秤量ぐらいで薬剤の種類の鑑別は難しいです。

その為、散剤瓶を調剤始めに手に取る時、ラベルを確認、処方せんと照らし合わせる時に再確認、棚に戻す時に再々確認をするように心がけます。

また、倍散の扱いも注意が必要です。病院によって賦形剤を加えて10倍散、100倍散などの予製剤を作り置きする場合があります

処方せんに書かれた数字は倍散の量なのか、原末量なのか、しっかり見分けることが重要です

4.処方監査は別のスペースで

処方監査は、調剤した薬剤師ではない薬剤師が行うのが基本です。

しかし、薬剤師の少ない薬局は、処方監査も同じ薬剤師がやらなくてはいけない場合もあります。自分で処方監査をする場合は、調剤をした場所から移動して別のスペースで行うのが理想です。

頭を切り替え、他の薬剤師が調剤したと考えながら監査をします。

5.調剤ヒヤリ・ハットの情報は共有しあう

薬剤師同志が調剤ミス情報を共有し合うことは、互いの注意を喚起することにつながります。

薬剤師間で、調剤ミスの発生防止がしやすくなります。

まとめ

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薬剤師一人一人の注意が必要なことは勿論ですが、それで完璧とは言えません。

自分一人では気付かない間違いがあります。その気付かない間違いは多角的に見ることで未然に防ぐことが出来ます。

多角的に見るとは、他の薬剤師たちの目です。完全なる100%の剤過誤防止は、一人では限界があります。他の薬剤師との連携が、調剤過誤を未然に防いでくれます。

一人薬剤師の薬局は、少し場所を変える、調剤して15分後に再確認するなど、別の薬剤師になったつもりで確認することで調剤過誤を未然に防ぐことが可能です。

調剤過誤による事例 1人の薬剤師が原因で薬局廃業

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調剤事故、ミスは薬剤師が数人いても起こることがありますが、今回の記事は薬剤師が1人だったゆえに起きてしまった事件です。

確かに、調剤した後の処方監査は、別の薬剤師がやるのが適切ですが、薬局に薬剤師が1人であれば、調剤も監査も自分でやらなければいけません。

その繁雑さが起こしたと言える事件を紹介します。

透析患者さんに誤って血糖降下剤を投与

R薬局は事故当時、月約40枚の処方箋を受けていました。

近くの医療機関は透析を受ける患者さんが多く、R薬局も透析患者さんがメインでした。

今回、被害を受けた患者さんは、66歳女性でやはり週3回、透析を受けていました。

在る日、この患者さんの処方箋には、低血圧治療薬リズミック錠10mgが追加されていました。この薬は透析日の朝、服用するように指示が出ていました。

R薬局の薬剤師O氏(60歳、女性)は誤って、リズミックの代わりに、包装が類似しているグリミクロン40mgを他の薬と一緒に一包化の薬袋に入れ、そのまま患者さんに渡してしまいました。

その後、二回の透析日にグリミクロンを飲んだ患者さんは5日後、低血糖性昏睡に陥り、近くの入院設備のある病院に搬送されました。

新聞報道では、患者さんは昏睡状態で意識が回復しないまま、一カ月後、亡くなりました。O氏の話では、患者さんは一時は話ができるまでに回復されたようだったと。

結局、死因は明らかにされていません。

ただ、調剤事故と患者さんの死亡因果関係は証明されなかったっため、業務上過失致死罪に問われることはありませんでした。

長年の経験による過信と思い込みが招いた事件

O氏は過去2度に渡って血糖降下剤を他の薬剤と別に保管するように指導を受けていましたが、保管方法を改善することはありませんでした。

O氏は「劇薬は一種類しか取り扱っていなかったし、それまで一度もミスをしたことがなかったので、あえて区別しようとは思わなかった」と話していました。

たとえ、そういうことであっても調剤の段階で気付けば、事故を回避できたと考えられます。

しかし、1人薬剤師という忙しさに加えて、経験に基づく過信や思い込みで監査を怠ってしまったということになります。

事件が起きたのは、お盆の前後で繁雑な時期

この時期は休日を挟み、卸へ発注する薬品のほうに注意が集中してしまったとO氏の話。

また、翌日、出す予定の透析患者の薬の調剤準備が集中し、慌ただしかったとか。

O氏はりズミック6錠を箱からとりだした際、この薬を他の処方薬とは一緒にせずに、何故か、別の所にしまっていました。

O氏の調剤の習慣

O氏は取り揃えた薬剤と記入済みの薬袋、処方箋を調剤前にビニール袋にまとめ、患者名の五十音順に並べるようにしていました。そこでミスが、起きました。

「薬を取り違えた患者さんの前後は、グリミクロンが処方されている患者さんだった。

そこで、無意識にどちらかのグリミクロンをその患者さんの袋の中に入れてしまったんだと思う」と。O氏は話しました。

幸いにもグリミクロンを抜き取ったはずの前後の患者さんの薬には間違いはありませんでした。

O氏は分包機を使っている時も、グリミクロンが入っていることを確認しませんでした、

グリミクロンとリズミックはPTPシートからはずしてしまうと、見分けるのは難しいです。

「錠剤に打錠されている番号を見ればよかったが、そこまでは気がs回らなかった」とO氏。

調剤後で行う監査も一人のため、曖昧でした。やったようなやらなかったようなという感じだったようです。

事故後のR薬局,患者さん達の間でこの事故のことが広まったためか、処方箋が月5.6枚に激減

事故を報告した●●薬剤師会の指導を受けて。薬局を再開させたものの、患者さん達は戻ってきませんでした。

また、O氏は毎日、入院した女性患者さんの元に毎日、見舞に行ったけど、患者家族から「もっと誠意を見せろ」と怒鳴られたり、面会を断られたりしました。

「それでも、毎日、お見舞いに行くことしかできなかった」と。

県の対応

O氏を管理薬剤師として不適切と判断し、管理者変更命令を下しました。

O氏は管理者変更命令を受けた翌日、R薬局が1人薬剤師だったこともあり、閉店を決意し。県に薬局の廃業届を提出しました。