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患者さんが長い間、服用していた薬が原因で、薬剤アレルギーを起こしてしまいました。

薬剤アレルギーは飲み始めの頃に出現することが多いのですが、睡眠不足、過労などで体調不良だった場合、長期間、服用していた薬でも突然、出てきてしまうことがあります。

事例

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薬剤師は男性の患者さんの名前を呼び、服薬指導を始めようとしました。

「いいよ。もう、長いこと飲んでいて全部わかっているので」

「そうですか。今回は新しいお薬も出ていませんし、量も変化がございませんね。何か、最近、体の調子はいかがですか?」

このまま,患者さんを帰らせては薬剤師としての仕事は調剤しただけとなり、それ以外の報酬点を獲得することはできません。

「最近、仕事が忙しくて睡眠不足ではあるんだよね。疲れやすいし」

「疲れとはどのような? 肩がこるとか、体がだるいとか……」

「いや、まあ。色々。これからまだ仕事が残ってるんで。すぐに会社に戻らなければいけないんだ」と言って、さっさと会計をすませ、出ていかれました。

 

3日後

数日後、前述の男性の患者さんが薬局に再び、来局されました。

「あら、そのお顔はどうされたんですか?」

患者さんの顔全体に、紅い発疹がたくさん!

「さっき、病院に行ってきたんだけど、長い間、飲んでいる薬でも、体調が悪かったりすると、このような発疹が出ることがあるんだってね。医者が話してた」

「ええ、たしかにそういうこともあります。体調次第では……」

「そんな説明してくれなかったじゃないか?僕は歩合制で働いていて、こんな顔では営業はできないと言われ、自宅待機させられているんだよっ。そのため、今月の給与はほとんどもらえないから、薬局で責任とってもらいたい」

「責任?どのような?」

このような場合、患者さんが被った被害に対して薬剤師に責任がある?

薬剤師の業務は、人の命に関わるものです。そのため、それ相応の気遣い、配慮の義務が生じてきます。

つまり、調剤した薬の服用に際して、患者さんに起こり得る副作用等を予測して、回避する義務があります。

薬剤師法第23条を見ると、処方箋通りの調剤を実施し、このとき、処方箋に記載された薬剤の名称や分量を間違えないようにしなくてはいけない義務があると書かれています。

そういった業務の中で、常用量を超える薬剤や併用で相互作用を生じる薬剤が、処方箋に記載されていたりしてないかを確認し、疑義紹介の必要性があれば、その処方箋の発行元である医師に問い合わせ、その疑義を解消した後でなければ、調剤を行ってはいけないことになっています(薬剤師法大24条)。

それらに加えて、薬剤師法第25条の2においては、薬剤の適正使用のために必要な情報を患者さんに提供する義務が、薬剤師には課せられています。

薬剤師は今回の場合、注意義務の違反をしたことになるのかどうか?

薬剤師は、患者さんの長期服用期間に起きた薬剤アレルギーを予測できたかどうか、また、仮に予測できたとした場合、その副作用を回避することができかどうかについて検討する必要があります。

前述の患者さんの場合、どの薬を服用してアレルギー反応が出たのかは、不明です。しかし、調剤して患者さんに渡した薬の中で、添付文書に「長期服用に関して、アレルギー反応が起こる可能性について記載があれば、医師への語義商会の義務、そして、患者さんに説明する義務が出てきます。

また、調剤した薬剤の添付文書から長期服用に際しての過敏反応について記載されていなくても、他の文献等の長期服用に関する過敏症の発症例の報告があった場合、情報収集することで副作用の予測がつきます。

ここでも薬剤師は、医師への疑義照会や患者さんへその説明を行う義務が生じてきます。情報収集の範囲としては「診療当時の臨床医学の実践による医療水準」(過去の裁判例から)が目安となります。

添付文書の閲覧や情報収集によって副作用の予測が可能であり、今回のように患者さんへの説明をしなかった場合、医師と薬剤師は、患者さんの受けた被害に対する共同不法行為の責任を負うことになります。

患者さんの収入の補償も必要

薬剤の副作用による薬疹が顔に出てしまった患者さんは、対人的な仕事を行うことができなくなったので、それが治癒するまでの期間、収入の補償も行わなければいけません。

賠償金額は、責任の度合い(過失割合)に応じて支払うことになりますが、患者さんの体調はいつも同じではなく、薬の作用をよく理解していない患者さんに対して、体調が悪い時に服用した責任を問うことはできません。

医師と薬剤師では、処方箋を発行した医師のほうか責任が重くなると考えられます。

とはいえ、文献上の報告例が極めて少ない場合にまで医師や薬剤師に注意義務を要求しなくてはいけなのか……このあたりは人によって判断が違ってきそうです。

判断に参考になりそうな判例

かなり古い判例ですが、1996年に高松高等裁判所であった判決の事例を紹介します。

患者さんが、薬を飲んでスティーブス・ジョンソン症候群(SJS)を発症してしまいました。

判決内容

「副作用状態が極めて重症であれば、発症の可能性の例が非常に少ない場合であったとしても、早期に治療することで、重大な結果を未然に防ぐことができるように、服薬上の注意点を具体的に指導する義務がある」

この判決内容から副作用の重大性が、注意義務の発生の判断の基準になると考えることができます。

そして、添付文書や文献に副作用の記載例がなければ、結果を予測することは不可能に近いので、医師や薬剤師の責任は否定されることになります、