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門前の総合病院のための薬局ではなく、その地域のための薬局を作りたいと考え、総合病院の前での出店依頼を断りました。

マンツーマンの時代は終わった

総合病院と隣接した敷地に薬局を建ててくれないかという病院経営者の申し出を断った調剤薬局グループの代表者G氏。

何故なのでしょうか?

「病院と薬局のマンツーマンの時代はすでに終わった」というG氏の考えがあったからです。今までにG氏が建ててきた薬局も、時代の流れでほとんどが門前薬局で、病院とマンツーマンでやってきました。

医薬分業が現在のようにまだ、進展がなく、患者さんの間にも浸透していなかった頃は、特に医師からの信頼を得るためにもマンツーマン形式がやり易く、患者さんに理解してもらうのにはこの形が必要でした。

しかし、これからはもっと視野を広くして、地域全体に貢献できる薬局を目指していかなければ、生き残ることは、難しいとG氏は判断しました。

地域に貢献できる薬局作りのアウトライン

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隣りの土地に出店要請をした総合病院は坂の上にあり、G氏が作ろうとしているT薬局の予定地は、坂を下りきって、さらに100m離れたところにありました。

T薬局を開局するにあたって、G氏の経営するグループ薬局に勤務していた薬剤師18人によって「地域に貢献する薬局の理想像」について議論を交わしました。

議論の結果、出された案は…

  • 24時間営業
  • ドライブスルーの窓口にする
  • 在宅医療のための無菌調剤を行う
  • 病院と連携して血中濃度薬物モニタリング(TDM)]
  • 地域の中で健康勉強会、外部から専門家を招致して研修会などを開催する

など、上記の中から「ドライブスルーの窓口」と「無菌調剤の時に必要となるクリーンルーム」、」この二つの設置が決定になりました。

ドライブスルーは、身障者や小さな子供を抱えた母親や雨の時。無菌製剤の時のクリーンルームは、近隣のどこの薬局もまだ設置していないということが、設置の理由でした。

新しくできたT薬局の概況

T薬局は敷地250坪、80坪の薬局といった感じです。残りの敷地はほとんど、駐車場にしてあります。

処方箋受け付け枚数は約120枚です。前出の総合病院の処方箋集中率は80%と、やはり近隣ゆえに高率ではありますが、月に1%ずつ低下している状況です。

このような状態で、薬剤師の常勤は4人、事務が4人のうち、パートは二人です。開局してから一年の間に、受け付けた処方箋発行の医療機関は、約80箇所になりました。

特筆すべきことは、夕方4時過ぎ以降にやってくる約9割の患者さんが、総合病院以外の病院を受診してきた患者さんなのです。

これらの患者さん達は市中心部の病院を受診し、患者さんの自宅近くのT薬局まで車に乗ってやってきます。

備蓄品は開局当時、1000品目でしたが、一年経った現在、1200品目にまで増えました。

備蓄品を多く持っているという評判が広まり、今では、門前薬局がない病院から在庫確認の問い合わせが来るようになりました。

ドライブスルーの窓口は二つ

開局する前に県の薬務課との打ち合わせでドライブスルーの窓口の使用は、原則として開局する前に県の薬務課との打ち合わせで、ドライブスルーの窓口の使用は、原則として新しい患者さんは利用できないということになりました。

ドライブスルーの窓口にきた患者さんで初めての場合は当然、薬局の中に入ってもらいますが、新患ではない場合でも、「血液でも計って帰られませんか?」と薬局内に入ってもらうようにしています。

とはいえ、ドライブスルーの窓口を利用する患者さんは4割ぐらいになりました。

ドライブスルーの窓口が集中する時間帯は午後6時半から7時半です。

ドライブスルーの窓口は薬剤師の安全確保にも役立ちます。の窓口を使用すれば、患者さんが薬局の中まで入ってくる必要がありません。

夜間の場合、この窓口を使用すれば、薬剤師の安全確保もしやすいので、24時間調剤を検討しているところです。

クリーンルームは未来への投資

5,2㎡くりーンルームはまだ、使用したことがありません。総合病院に無菌製剤を作るためのクリーンルームがあり、それで間に合せているようです。

T薬局のクリーンルームは、クリーンルームを設置していない地域の診療所が、在宅医療に無菌製剤を必要とする場合にサポートできればいい、現在は先行投資ということだけれど、と、G氏は言っています。

万が一、総合病院に院内薬局ができたら? と考えてみる

T薬局の管理薬剤師は、勤務薬剤師達に「上の総合病院に翌月ぐらいから、院内薬局ができてしまったら、どうなるか」ということを常に考えながら、業務をするように言っています。

患者さん達にG薬局を離れないでいてもらうには、

  1. 地域に根付いて患者の生活を把握する
  2. 門前の制約とは違う、自分で考え、自分のペースで理想的な服薬指導を率先と実行する

この二つが最低限必要と、勤務薬剤師に提言しています。

OTC医薬品の活用

地区の公民館で、健康講演会の講師もしている管理薬剤師がもう1つ重要視したいのは、OTC医薬品の活用、販売です。

T薬局は待合室と同程度の広さがあるスペースに、OTC医薬品1200品目と、衛生・介護用品を取り揃えて陳列しています。

しかし、品目数の多さに対して、売り上げは調剤の売り上げの約3%程度しかありません。

OTC医薬品は、利益を作るためのものではなくて、近所の方の利便性を考えて置いています。

かかりつけ薬局というのは、病院を受診するほどではないお客さんの健康管理をサポートすることも重要だと考えています。

T薬局から離れたところにあるドラッグストアに行くことができない高齢者がよく使用する医薬品は、ドラッグストアとほとんど変わらない価格に下げています。

薬局製剤に取り組む計画

薬局製剤は利益があるから計画しているというより、お客さんに一番、効果のある品目を勧める時の選択肢が増えるという理由から、薬局製剤を作る準備をしています。

薬剤師は町の化学者

クリーンルーム、ドライブスルーといった設備は非常に派手な部分で目に付きやすいけれど、本当はそこが最終目的ではありません。

薬剤師が地域に根差すということは、町の科学者という一番の基礎に戻るということです。

医薬品だけでなく、農薬、日常使用する薬品などのアドバイザーとなるべきです。患者さんやお客さんと接している中で、出てきた問題点を一つ一つ丁寧に解決していく姿勢が一番重要なのです。