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現在、薬学部も6年制になり、臨床医学を学ぶ機会も与えられるようになりました。

そうなる以前から、臨床医学がわかる薬局の薬剤師になろうと20年以上も前から、最新の医学を身につけるため、一人日々、勉強を続け、医師から絶大な信頼を受けている薬局薬剤師K氏を紹介します。

針灸師の資格も持つ薬剤師

K氏の保険薬局は、東京都M市の郊外にある8階建ての都営住宅の一階にクリーニング屋と食料品店の間にあります。

医薬品卸に数年、勤務して26歳で薬局を開設しました。K氏は開局と同時に、針灸専門学校に通い、針灸師の資格を取得しました。

針灸治療を行う「針灸院」は、薬局の隣に建てました。

当時から医薬分業の形はありましたが、現在とは違い、まだまだ住民たちにはこの制度は、馴染がない頃でした。

開局当時の処方箋はポツポツ程度

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開設した時から保険調剤の看板を掲げてはいたものの、処方箋は全く来ない日もあるぐらいで、処方箋が増え始めたなと感じた時は、すでに5年が経過していたとか。

さらに10年後やっと、何とか、調剤だけでも採算が合うようになりました。

それまでは、雑貨の販売、針灸炎の収入で生活をしていました。

飛び込み処方箋の患者さんはほとんどゼロ

現在は一カ月、400枚程度の処方箋がきていますが、そのほとんどが固定客です。

つまり、飛び込み処方箋はほとんどないと。この状況は在庫調整がしやすく、小規模薬局にとっては理想的な形態といえます。

このような安定に導けたのは、住宅地という立地に恵まれていたということもありますが、

開局数年後から始めた医師への「紹介状」の影響が大きいと言えます。

紹介状の活用

紹介状は普通、医師が他の病院に患者を紹介する時に、医師達の間でやりとりされる診療情報提供書のことです。

医師は患者さんを自分の専門分野以外、または自分の所ではできない治療が必要と考えた場合、他の病院に患者さんを行かせます。

その時に紹介する側の医師が患者さんの所見、これから必要とされる検査や処置などを書いた紹介状を患者さんにもたせます。

K氏はこの紹介状を薬剤師の視点で記載し、患者さんに紹介先の病院、診療所に持って行かせるようにしていました。

どういう状況で?

OTC医薬品などを買いに来たお客さんや針灸院で、治療を受けた患者さんなどから病気に関係する相談を受けた時、K氏が病院や診療所で診察を受けた方がいいと、判断した場合に紹介状を書きます。

K氏が書いた処方箋を持って紹介した病院、診療所で診察を受けた患者さん達のほとんどがそこの院外処方箋を持って、K薬局に戻ってくるのです。

継続的な薬物治療が必要となった時、その患者さんは継続的にK薬局に処方箋を持ち込みます。

このような積み重ねで、処方箋の固定客が増えていったというわけです。

K氏が書いた紹介状の内容

※Y患者さんに書いた紹介状

「膝と足指に痛みがあり、診察してみると、膝関節に水が溜まっている時に出てくる膝蓋跳動が少し認められました。

本人は膝と足の指は同じ原因と考えています。しかし、膝の痛みと足指の痛みは別のものである可能性が髙いです。

足指の痛みは膝とは関係なく、高尿酸血症による痛風発作ではないかと考えます」

このように書きはしたものの、薬局では確定診断のための血液検査、レントゲン撮影などは勿論できません。

そのため、Yさんに上記の紹介状を持たせる時、尿酸値の測定が必要ではないかと併記しました。

K氏は週に一回程度、このような紹介状を書いています。

身近な医療の専門家として

紹介状には、薬剤師として患者さんの相談を受けている間に、自分が知りたいと思ったことについて検査、診断を医師にリクエストする気持ちで書いています。

要するに、身近な医療の専門家として、住民たちの気軽な医療相談にのっているのです。

相談を受けながら、病院に行って、詳しい診察を受けたほうがいいと判断した時、薬局から病院に行かせるというわけです。

病院から病院への「転院」ではなく薬局から病院への「転院」です。

紹介状を出せば、ほとんどの医師が結果を教えてくれる

患者に持たせた紹介状に対してほとんどの医師が返事をくれます。

診察後、何かのメモ用紙に走り書きして患者さんに持たせた場合もあれば、正式の診療情報提供書で後日、郵便で送られてくることもあります。

前述したYさんの紹介状に対して紹介先の整形外科病院からの返信内容

「レントゲン撮影を見ると、Yさんの右足指には痛風患者によく見られるパンチドアウトが観察されました。現在は血中尿酸値の測定中で、結果を待っているところです」と書かれてありました。

ということは、K氏の診断とリクエストした検査は的を得ていたということになります。

このような返信を医師からもらうことで、患者さんの症状だけでなく、病名までわかってくるので、的を得た服薬指導もできることになります。

また、疑義照会もすでに紹介状を交わしている仲ということもあって、気兼ねなく電話することができます。

医師からの信頼を得られることが最大のメリット

適切な紹介状を書いていけば、医師はその薬剤師に対して、一目を置くようになるのは当然のことと考えられます。

最近は医師のほうから漢方薬の相談も受けるようになったとか。

最近, K氏は3箇所の病院の医師から分業の相談を受けました。

「分業を望んでいるが、近隣で薬局を開いてくれないか」と。

これらの医師たちは、医師たちに適切な紹介状を書いていると噂を聞き、「信頼できる薬剤師」として自分達の仕事のパートナーに選ぼうとしているのです。

医学の全てを理解するのはまず無理。

でも、医師の話が、理解できるぐらいの医学知識を身につけることは必要と考え、医学の勉強をしてきたことが、この紹介状の方法で成功できた秘訣だと考えます。

K氏の医学の勉強方法

K氏は開局当初から、医学の勉強に力を注いでいました。

薬剤師向け雑誌だけでなく、「JAMA」(毎日新聞社)、「日本医事新報」(日本医事新報社)などの医師向けの雑誌のみならず、看護師向けの雑誌まで定期購読し、勉強をしました。

特に、全診療科の最新の動向が書かれている「日本医事新報」は、毎号全ページを読み込んでいるとのこと。

それでもまだ不足と感じた時には、各診療科のテキストや事典で調べています。

医師と紹介状を介して、コミュニケーションをするにはやはり、相当の勉強が必要のようです。

紹介する病院先は患者さんの評判で決定

患者さんの評判からK氏独自で紹介する病院を決めます。

初めて紹介する病院には最初に電話で確認します。また、こちらに返事をくれたかどうかも選択の材料になります。

医師は薬局薬剤師と接する機会がほとんどないこともあってか、薬局薬剤師のことを金も受け主義の腹黒い職業炉誤解している医師も多いと耳にします。

自分達も患者さんのことを真剣に考えているということをきちんと理解してもらえば、信頼関係は必ず生まれるのです。

「医師も人間、怖がらずにこれからもぶつかっていきますとK氏はしめくくりました。