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今回は患者さんが薬局に調剤医療費の一部負担金を支払おうとしないケースです。

「薬局長、患者さんが財布を忘れたといってお金を支払ってくれないんですが」

「じゃあ、仕方無いから、次回、頂くしかないだろう」

「それが、前回も、持ち合わせのお金がないと言われ、頂いていないのですが」

「そんな……わかった。私から話してみよう」

薬局長は丘ねを支払うてくれない患者さんに、

「●●様、前回もお支払されていないようなので、今回は何とか支払って頂けないでしょうか?」

「いやあ、申し訳ありません。本当に財布を持ってくるのを忘れてしまって。次に、今度こそ必ず、支払うから……」

患者さんは両手を擦り合わせながら言いました。

「次回と言われましたが、●●様は来月の末まで来院されませんよね?」

「じゃあ明日。明日。必ずお金を持ってくるから」

「では、明日、前回の分と一緒に支払って頂けますか?」

「もちろん、必ずお支払しますって。では、明日」

さっさと薬局を出てしまった患者さん。

翌日、患者さんは夕方、閉局時間がきても、来られませんでした。

「悪気はないんだと思うけど、自宅に電話してみよう」

と、薬局長が患者さん宅へ電話してみました。

「ありゃあ、こりゃあいかん」

患者さん宅の電話は、留守電に切り替えてありました。

もしかしたら、この患者さんは薬局を欺こうとする意図があるのかもしれません。その場合は詐欺罪等が問われる可能性もあります。

ここでは、その点については触れないで、患者さんのお金を薬局が回収するのにどんな法的手段があるのかを検討してみましょう。

遅延損害金の請求

薬局と患者さんとの間で、2回分の医療費の支払を翌日までに行うという合意が成立していました。それにも拘らず、患者さんはその約束を守らず、債務の履行に遅れたので、薬局は患者さんに実際の未払い金に加えて、遅延損害金を請求することができます。

債権者と債務者との間で特に取り決めを設けていないのであれば、民法上、未払い金に対して、5%を乗じた金額をお請求することができます(民法第404条 419条の1)。

患者さんからお金を回収する方法

大きく分けて3つあります。

 

①当事者間の合意による方法

②裁判所の判定に基づく方法

②裁判所の調停を利用する方法

 

①は当事者の間で、支払方法を約束するという方法です。最も簡単な方法なので、調剤医療費のような割と少額な請求の場合は、この方法が簡単でやりやすいでしょう。とはいえ、当事者間の約束だけでは債務者への圧迫効果がそんなに期待できません。より確実に回収するためには、債務者側に保証人や連帯保証人など、人的担保を用意させるようにしたいものです。

このような場合、患者さんが約束に従って支払わないようであれば、薬局は保証人に対して、遅延損害金を含む未支払金を請求することができます。

また、人的担保のほか、不動産に抵当権などを設定するというような物的担保を用意させるという方法もあります。

しかし、抵当権の設定は手続きが面倒で費用もかかるので、少額の請求にこの方法は、不向きと言えます。

回収の有効性を高めるためには?

当事者間で合意となった時点で、公証役場で公証証書を作っておくことも考えます。

※公証証書……公証人が当事者の依頼によって作成する証書のこと。

公証証書の内容が一定の基準をクリアしていれば、裁判所の判決と同等の効力を持ちます。つまり、公証証書に当事者間で合意に至った支払方法を記載しておいて、患者さんが支払わなかった時は、患者さんの財産を差し押さえて、回収する強制力を持っています。

 

②については……

薬局が患者さんを訴えるもので、回収の効力は大きいです。不払いの意思が固い患者さんの時にいいかもしれません。訴訟を起こせば、債務者側が敗訴し、それによって薬局は患者さんの財産に対する強制執行により、患者さんから遅延損害金を含む未払い金を回収できます。

訴訟を起こせば、手間や費用が気になるところですが、30万円以下の金銭支払いによるトラブルについては、簡易裁判所の「少額訴訟」を利用します。少額訴訟は通常の訴訟に比べて、手続きが簡略化されています。原則として一回の審理で、即日判決が言い渡されます。費用は請求金額の約1%となっています。

訴訟を提議した場合、裁判所が和解提案することもあります。和解ということになれば、裁判所が金額や支払方法などを決定した和解調書を作ります。和解は、法的には判決と同じ効力を持ちます。

 

③の調停においては……

訴訟に至る前の紛争解決法と言われています。裁判所が当事者達の間に立ち、当事者間の話し合いで解決を目指します。調停が成立すると、裁判所は調停調書を作ります。調停の効力は裁判上の和解と同一とされています。

 

3つの法的手段について述べてきましたが、これらの方法をとらずに済むのであれば、それに越したことはありません。

現実的には、まずは支払ってくれるよう患者さんの説得から始まると思いますが、それでも未払の患者さんがいた場合、あらかじめ、支払金額や支払期日、支払方法などを患者さんと確認した書類を作っておくことが重要です。その方法が円満でスムーズな解決法と言えます。