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薬局内が混雑している時、忙しく動き回る薬剤師が患者さんに触れ、患者さんにけがを負わせてしまうというケース、ありえますよね。

今回は、そんな事例と法律の関係を考えてみます。

事例

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薬局内で薬剤師と患者さんがぶつかり、患者さんが転倒し、足を少し痛めてしまいました。薬剤師はすぐに謝り、ケアし、自宅まで送り届けました。

一週間後、患者さんは松葉杖姿で薬局に現れました。

「どうされたんですか?

「昨日、転んで足を骨折してしまったのよ。ここで足をくじいてしまったからよ」

「でも、足を傷めらたのは、一週間前で今回のお怪我とは関係ないのでは?」

「そんなことないわ。ここでねんざをしていなければ、転んで骨折することなどなかったわ。この骨折の治療費は払っていただきますからねっ」

このような場合、薬局で起こしたねんざにより二次的に起きてしまった骨折まで薬局や薬剤師は、法的な責任をとわれなければいけないのでしょうか?

接触して患者さんを転倒させたことは不法行為

故意に、または過失で他人の利益や権利を侵した行為は不法行為となり、それによって生じた損害を不法行為を犯した者は賠償する責任を負わなければいけません。

薬局内で接触して患者さんにけがを負わせた薬剤師は、不法行為をしたということになり、賠償責任が生じてきます。

また、事業のために従業員を使用する者は、被用者の業務執行において第三者に加えた損害を賠償しなければいけません。

薬剤師は薬局内を歩行中に患者さんに接触し、転倒させているが、これは業務執行中の事故です。患者さんのねんざに対して、薬剤師を雇用している薬局開設者も薬剤師と共同で損害賠償責任を負わなければいけません。

ただ、不法行為によっておきた全ての損害を、不法行為を犯した者が賠償しなければいけないわけではありません。

損害賠償の範囲

不法行為によって通常、因果関係を認め得る範囲に限られています。

そして、今回のようにねんざが原因で骨折した二次的被害という特別な事情により生じた損害については、薬剤師がその事情を予測することができた場合のみ、損害賠償の対象となります。

今回の場合は、ねんざしたことで生じた直接的な損害は、不法行為と因果関係を認めることができると思われます。

では、骨折という二次的被害が「特別な事情により生じた損害」と言えるかどうかが一番の問題となります。

例えば、デパートなど一般的な店で、従業員がお客さんに接触してねんざをさせた場合、後にそのお客さんが階段から転落して骨折したとしても、骨折に対する責任をデパートや従業員には負わせられないと考えられます。

それば何故かと言いますと、医学的知識を持たない従業員にはねんざによって、階段から転落するリスクが高くなることまで予測は出来ないからです。

医学知識のある薬剤師がいる薬局においては?

薬局という場所は様々な病気、けがを負った人に対して治療に必要な医薬品を調剤、指導を行い、渡す場所です。

薬局内には一般の店とは違い、高齢者、体に障害を持った人も来ており、軽い接触でも簡単に転倒してしまう人が常にいると薬剤師は、予測できます。

また、ねんざをすれば、歩行や階段の上り下りが難しくなり、日常生活において二次的な事故を容易に起こす可能性があることは、薬剤師であれば予測がついたのではと考えることができます。

本事例と類似した実際にあった件

70歳代の女性で、薬局内で従業員に追突され、転倒、右股関節をねんざ。その後、痛みがなかなかひかず、寝たきりとなり、数日後、通院のため自宅を出ようとした際に再び転倒し、骨折してしまいました。

T地方裁判所は、薬局内での接触に起因する二次的な事故は薬局側の責任にあるとし、約660万円の支払いを命じる判決を下しています。

薬剤師はこのような判例が実際にあると認識し、薬局内で患者さんがけがをしないよう十分に配慮すると同時に、万が一にもけがをさせてしまった場合は医療機関への受診、必要であれば入院を勧めるなどして、二次的な被害が起きないよう注意する必要があります。