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いつも、処方箋の本人が処方箋を持って、薬局に来られるとは限りません。

本人が動けない、所用で忙しいなどで代理人が処方箋を持って薬局に来られることはよくあります。

全国から集められたヒヤリハット事例の中に、代理人に服薬指導を行ったことでトラブルが出た例がいくつかありました。

それらについて考えてみたいと思います。

代理人への服薬指導は極めて危険!

代理人に処方箋に書かれている薬剤の使用目的、服用方法などを説明し、その内容を処方箋の本人に伝達してもらうことがあります。

このような状況について薬剤師を育てる薬学部の指導者達は、非常に危険であると話しています。

たとえ、毎日の生活を共にしている家族間であっても、患者本人に薬剤師が代理人に服薬指導をしたままに伝わらないことが多いからです。

最近は高齢者の1人住まいが増えており、ホームヘルパーが薬局に薬を受けとりに来ることもまれではありません。

ホームヘルパーの中には薬を受け取るということだけが目的で、薬剤師の説明などきちんときいていないことも珍しくありません。

従って、薬剤師は家族であろうと、他人であろうと、処方箋本人の代理人に服薬指導をしなくてはいけない時には、薬剤師の説明をどこまで理解し、きちんと患者本人に伝達できるのかなどを、しっかり把握してから、薬を渡すべきです。

特に処方内容や剤型の変更などがあった場合、変更内容の告知文書等を薬袋の中に入れる、薬袋の表面に赤ペンでわかりやすく書き添え、注意を促すことが大事です。

場合によっては、患者さん宅に出向く

本人に伝達してもらうことが難しそうと感じたら、薬剤師が患者さんに直接、電話するか、患者さん宅に出向くなどのきめ細かい対応が重要となってきます。

次はトラブルがあった実例を紹介します。

代理人の夫とは不仲だったためにおきたトラブル

68歳の女性Aさん。逆流性食道炎、高血圧、脳梗塞等の既往歴あり。

Aさんは今まで逆流性食道炎の治療薬タケプロンのカプセルが処方されていましたが、タケプロンの錠剤に変わりました。

その変更を薬剤師は、代理人のAさんの夫に説明しました。しかし、Aさんの夫はその情報をAさんに話しませんでした。最近は、互に会話もあまりなかったとのこと。

変更になったことを夫から告げられていなかったAさんは、逆流性食道炎の薬ではない、薬剤師が調剤をミスしたのではと、不安になり、飲むのをやめてしまいました。

夫にAさんは薬局に薬をとりに行かせた理由

Aさんは脳梗塞のため、軽い後遺症がありました。内科受診後、そのまま、残ってリハビリをしていました。

夫も同じ病因に通っていたので、Aさんがリハビリ中、薬局に行き、自分の薬とAさんの薬を受け取っていました。Aさんはほとんど薬局にくることが無かったので、薬剤師は夫にAさんの薬の説明をしていました。

従って、この時もカプセルから錠剤の変更の説明はAさんの夫にしました。

Aさんは調剤ミスと勘違い

その翌朝、Aさんが来局。「朝、薬を飲もうと薬袋の中を見たら、いつもとは違う薬が入っていたので、それは飲まずに他の薬を飲みました」と訴えました。

薬剤師はカプセルが錠剤二変更されたという情報が伝わっていなかったこと、そのことでわざわざ、薬局に足を運ばせたことを丁寧に謝罪しました。

そして、改めてAさんにAさんの夫に話した内容を話しました。今までの薬の成分と全く同一だと話しました。

夫とは不中で会話があまりなかった

「夫とは最近、会話がなく、この薬の話もしてくれませんでした」と、Aさんは薬剤師に話しました。

症状の悪化が懸念されましたが、朝食を食べる前に来られ、すぐにその薬を飲んでもらったので、服用期間が開いてしまうという事態は何とか、回避できました。

問題点

代理人がAさんの夫であったため、必ずAさんに伝わるだろうと薬剤師が思い込んでいたことが、大きな原因です。

薬剤師がAさんに直接電話をして説明をすれば、このようなことにならなかったと考えられます。

薬の使用目的や剤型変更などの情報は、代理人を介しては正確に伝わらないことを認識しなくてはいけません。

今回のようにカプセルから錠剤への変更だけでなく、製薬会社は薬剤の形状、色、PTPシートのデザイン、識別コードの変更は頻繁に行っています。

これらの変更による調剤ミスは、絶対に避けなければいけないことですが。変更の時、患者さんへの情報提供についても確実、的確にするよう心掛けたいものです。

薬剤師は薬剤の変更時において、その薬箱の中に薬と一緒に入っている変更告知文書を薬と共に薬袋に入れます。

その時に薬袋の表にも手書きで変更の告知分書が入っていることを書いておくのもいいでしょう。

忙しい薬局であれば、薬剤の形状等の変更告知は少なくないので、「告知文書入り」などといった印鑑を作っておくと便利です。

また、これらのことも薬歴に書いておくと、同じ説明を何度もするという無駄を省くことができます。

今回の場合の薬剤師の説明の模範例

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薬剤師の模範説明

「いつも飲んでおられるタケプロンですが、カプセルから錠剤に変更になりました。薬の成は今までのカプセルと全く同じです。

安心してお飲みください。

それに関する説明書をこちらの薬袋にいれておきますね。

薬袋の表にも「カプセルが錠剤に変更されました」と、書いておきましたので奥様にもご理解を頂けると思います。

念のために、私のほうからもお薬の変更のことを奥様にお電話をしておきましょうか?」

ジェネリック医薬品の対応

上記のようなことがジェネリック医薬品でもおこることがあります。

今まで飲んでいた先発メーカーの薬剤からジェネリック医薬品に変更する場合、デザインを似せているのもありますが、錠剤の大きさ、PTPシートのデザイン等は先発メーカーとは異なります。

変更の場合は上記のような細かな配慮が必要です。

これは薬局薬剤師である私も体験したことですが、80歳すぎの超高齢者の患者さんの中には、ジェネリック医薬品の意味をなかなか理解することができない人がいます。

代理人でなく本人に対してジェネリック医薬品変更の了解を得たにも拘わらず、自宅に帰った患者さんが「今回は薬が違う」とクレームがくることがあります。

痴呆症でなくても超高齢の患者さんの記憶力、理解力は低下しています。

違うと言われるたびに辛抱強く説明をするのも薬剤師の役目です。

どうしても理解不能である場合は、同居者に接触して説明しておかないといけない場合も出てきます。

1人住まいであるならば、服用時に合わせて、自宅に出向いて服薬指導ということも考えられます。

また、もの忘れのひどい患者さんにおいては、むしろケアマネージャー、ホームヘルパー等といった代理人の存在は有難いものです。