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薬剤師は基本的に正当な理由なく、調剤を拒んではならないと法律的に規定されています。

では、拒んだ場合、どのような処分になるのでしょうか?

事例

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夕刻、薬局を閉店しようとしていた時に、患者さんが駆け込んでやってきました。

「もう、閉店なんですけど」

「お薬を作ってもらえませんか?」

患者さんは薬剤師に処方箋を見せました。薬剤師は時計を見て、

「ごめんなさい、この後、会合に出席しなくてはいけませんので、他の薬局にあたってみてもらえますか?」

「そんなこと言われても、このあたりで薬局はここしかないですし。それにまだ、閉店時間にはなっていないのでは?」

確かに、まだ閉店時間まで15分あります、

母親に抱かれた赤ちゃんはぐったりしています。その横で男の子が不安そうな顔して立っていました。

薬剤師は子どもの方を見ないようにして、

「薬局なら隣駅近くにありますよ。ごめんなさい、大事な会議なので遅刻するわけにいかないので、早く閉めるのです。ごめんなさい。失礼しますね」

と、薬局のドアを閉めてしまいました。

それから数日後、子供と男性が薬局になかに入ってきました。

「パパ、あの人だよ。ミキちゃんのお薬を作ってくれなかったのは」

薬剤師は、声のする方を見ました。調剤を拒否した時、赤ん坊を抱いた母親の横に立っていた男子でした。

「うちの子があの時、薬がもらえなかったのが原因で、入院してしまったんですが、入院費用、請求してもいいですかね?」

さて、このような場合、薬剤師の法的な責任はどういう形で発生するのでしょうか?

調剤を拒否した薬剤師に発生する責任について

薬剤師第21条に、調剤を正当な理由なしに拒んではいけないと定められています。

医師法にもこれと同様の規定があります。医師は診察の求めがあった場合、やはり、正当な理由なくして、診察を拒んではならないと規定されています。獣医師も同様です。

医薬分業は国民の健康を守るということで推進されたものであると考えると、先の医師法、薬剤師法の規定は単なる理想的な目標ではなく、医師、薬剤師の診察や調剤に対して「義務」を課したものと言えます。

これらの条文に罰則規定は設けられていませんが、薬剤師が調剤義務に従わなかった場合、正当な理由が見当たらなければ、患者さんの被った損害に対して民事的に賠償責任を負わなければいけません。

調剤を拒む正当な理由とは?

薬剤師の調剤拒否を扱った判例はまだ見当たりませんが、医師(病院)の診察拒否の判例はいくつかあります。

例えば、第三次救急医療機関の指定を受けた病院が、交通事故にあった重症患者さんの受け入れを拒否し、その後、患者さんは死亡しました。

そのため、その病院、医師は損害賠償責任を追及されてしまいました。

この判決の内容は「医師が診察中、しかも手術中であったことや、担当医師が不在だったことは場合によっては、診察拒否の正当な理由となる」としました。

しかし、このような事実を病院側はきちんと立証していないということで、「過失」と言うことになりました。

もう一例を挙げてみます。

やはり、救急車で重症患者が有る病院に運ばれ、内科医が不在だったことに加えて、入院中の患者さんが危篤になった時で、医師の人手不足を生じていたことから、診察拒否に。その診察拒否の正当性理由が認められた判例もありました。

上記の判例から推測できますが、薬剤師が調剤を拒否したことを正当性ありと認められるには、調剤業務を行うことが客観的に見ても困難な状況な時に限られるということです。

個人的な都合に場合は薬剤師自身が急病になったというような特殊な事情意外は認められません。

その他で調剤業務を正当な理由で拒否したと認められる場合

①処方箋の有効期限4日を過ぎている

⓶処方箋に書かれた薬の在庫がなく、準備するのに時間を要する

③薬剤師が不在、急病である

⓸営業時間外である

今回の事例では?

その薬局の周りに他の薬局がなく、赤ちゃんもぐったりしています。

閉店間際とはいえ、薬剤師の個人的な事情で、薬局を早めに閉店させようとしているわけで、調剤に少しの時間も割けられないという状況でもありません。

この場合、薬剤師に調剤を拒否する正当な理由は見つかりません。従って、患者さんの損害を賠償する責任は発生してきます。

損害賠償の範囲

薬剤師が調剤拒否した理由と容体悪化という患者さんの損害の間に、どの程度の因果関係があったかで、損害賠償の範囲が決められます。

訴えられた場合、こうした因果関係の立証は、調剤拒否の責任がある薬剤師側の側に要求されます。

この事例では、患者さんの病名や処方内容などの医学的要素に加えて、患者さんが祖の日のうちに他の薬局に行かなかった理由、また、容体が変わった時に、救急病院に駆け込んだかそうでないかのどといったことも判断の決め手となります、