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一人薬剤師の薬局。一人薬剤師なので自分に何かあった時のために薬剤師は、経営者に薬剤師の増員をお願いしていました。

しかし、経営者は「なかなか、良い薬剤師がみつからなくて」と薬剤師の申し出に対応しようとしませんでした。

ある時、体調が悪くなり、少し出勤が遅れることを仕事場の薬局に電話すると、事務員が出てこられるまで自分が調剤しておくと返事がありました。あまり、経営がうまくいっておらず、患者さんも少ないため、つい事務員の申し出に甘えてしまいました。

昼過ぎ、薬剤師は出勤してきました。午後の調剤をしていると、午前中に薬をもらったという患者さんがやってきました。

「今まで、そんなことなかったんですが,この薬を飲んだらお腹が痛くなり、下痢になってしまったんですよ」

薬剤師はすぐに調べました。事務員が薬を間違えて患者さんに出していました。

このような場合の薬剤師の責任はどのようなものになるでしょうか?

無資格者による調剤がそもそも違法

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事務員という無資格者が行った調剤で患者さんが健康被害を起こしてしまった事例です。

薬剤師法第19条では薬剤師以外の調剤を禁じています。これに違反すると、薬剤師法第29条の規定で3年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金となります。

無資格調剤を行ったのは事務員。しかし、罰則を受けるのは事務員だけではなく、薬剤師も同様です。薬剤師は経営者に薬剤師に増員を求めていたぐらいで、無資格調剤を押し続けようとする意志は無かったようです。とはいえ、代わりにやるといった事務員に対して押し留めるわけでもなく、無資格調剤を容認しました。そして事務員が調剤事故をおこしました。

薬剤師は事務員と共同で違反したことになります。万が一にも罰金刑以上となれば、薬剤師免許が取り消しになることも考えられます。

経営者に対しては?

薬剤師から薬剤債の補充の要望が出ていたにも拘らず、補充せず、事務員が無資格調剤を行っても容認していました。これもやはり、薬剤師法第19条違反となります。

経営者が薬剤師でない場合、薬剤師が一人であるならば、その者を管理薬剤師とし、薬局の管理をさせることを義務付けられています。

しかし、経営者は薬局の利益を優先するあまりに、義務を怠ったことになります。薬剤師法第8条2項の薬局管理を違反したことになり、一年以下の懲役、50万円以下の罰金となります。

上記の内容は調剤事故があろうとなかろうと、無資格調剤をしたことに対しての刑事上の責任内容です。

無資格で調剤事故を起こした場合

民事責任の大きさは損害の大きさに比例します。

今回の場合は、無資格者が調剤事故を起こしたので、薬剤師が調剤して調剤事故を起こした場合以上に、損害賠償額が大きくなることはありません。

しかし、事務員は明らかな過失を犯したことになるので、損害賠償責任が生じる不法行為責任を負うことになります。

当然、薬剤師も経営者も事務員の無資格調剤を容認したことは間違いなく、注意義務違反、管理義務違反の対象となります。又、患者さんが被った被害も賠償しなくてはいけない義務が出てきます。

一般的に薬局で調剤事故が起きた場合は、経営者が患者さんとの調剤契約の当事者として賠償責任を負わなければいけません。その理由は民法第715条一項において「他人を使用する者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定められているからです。

ただ、内部事情的には、責任の割合があり、使用者が被害者に与えた損害を賠償した場合は、使用者は被用者に対してその賠償の一部を請求する権利(求償権の行使)が与えられます。

しかし、今回の事例に関していえば、使用者(経営者)が薬剤師によって適切な調剤環境を造営していなかったところに事故がおきたことになるので、求償権の行使は難しいと考えられます。