
大手の総合病院の門前調剤でありながら、処方箋を持たない人たちが頻繁に出入するM薬局。
その訳は薬局内の一画に設けられた「ヘルスフロア」にありました。
一日200枚の処方箋を受ける薬局の試み
R薬局の処方箋の内訳は、前に立地している総合病院の処方箋が95%で他の医療機関の処方箋が残りの5%という典型的な門前薬局です。
R薬局とメインの総合病院は、商店街から離れた土地に建っていました。
通常であれば、このような薬局には、その病院の受診者以外の人間が訪れることがあまりないのが現状です。
しかし、R薬局では、処方箋をもたない近所の人たちで賑わっていました。この人達の目的は先述した「ヘルスフロア」です。
無料で利用できるヘルスフロア
このヘルスフロアには血圧・血流測定装置、体脂肪計、骨密度測定装置が置かれています。
だれでも、処方箋も持っていなくても利用することができます。
「調剤薬局に来るのは、病気になった患者さんばかりです。
しかし、病気になってしまう前の段階から自分の健康を意識してもらえるような、予防医学に貢献できるような薬局を造りたいと考えていました」と、R薬局の薬局長が話してくれました。このヘルスフロアの費用は280万円。
この薬局長の狙いが当たったことは、処方箋を持たない人がたくさん、R薬局を訪れているという事実が証明してくれます。
相談を持ちかけてくる地域住民たち
R薬局に度々、きて、血圧や骨密度を計る人達が、「だんだん、数値が悪くなっていくのですが」と、薬剤師に{相談を持ちかけてくるようになりました。
そして、検査値を少しでも良くしようと、薬剤師のアドバイスを受け、運動量を増やしたり、食事の中にカルシウムを積極的に取り入れたりするなどの工夫をする人も増えてきました。
予防医学の大切さを理解してもらえるいい機会ですと薬局長は、話しています。
地域に根差した薬局作り
R薬局を経営するYメディカルはR薬局を開設するにあたって、役員と薬局長とで話し合いを持ちました。
事前に行っていた患者さんへのアンケートの集計結果を分析して新しい薬局のコンセプトを作りました。
基本方針
- 患者さんだけでなく社員にとっても居心地のいい薬局
- 地域に根差し、地域住民と常に関わっている薬局
- 高い水準で医薬連携、薬薬連携をみざす薬局
ヘルスフロアの設置は、上記の3つの中の二番目に相当します。
また、種々の測定機器の設置だけでなく、開局直前には、地域住民を対象にした薬局内の見学会を開催しています。
そして、薬局の2階では78㎡の多目的室があります。ここでは総合病院の医師を講師として招き、研修を毎月開いています。
ある月の研修会は「目の健康と病気」だったのですが、地域住民が30人きてくれ、熱心に話を聞き、医師に質問もしていました。
さらにはその多目的室では、医療関係以外、地域住民の趣味や活動にも利用できるように配慮しました。このようにして調剤薬局は病気の人だけがくるというイメージを払拭する努力をしています。
調剤以外の売り上げが上昇
R薬局の上記のような姿勢、考え方は調剤以外のOTC薬の販売等の売り上げ増に確実に結びついています。
開局当時は、最低限の売れ筋のOTC薬しか置いていなかったようですが、OTC薬の相談を受けたり、お客さんの要望に応じたりしているうちに、OTC薬の品目が増えていきました。
また、介護の相談にものっていることもあって、介護用のオムツなど介護用品も売れるようになりました。薬局の総売り上げの20%が、調剤以外を占めるようになりました。
地域住民への働きかけ以外の実践
- 待ち時間15分以内
- 患者さんのプライバシー確保
- 身体障害者への拝領
- 24時間対応の電話相談
- ビデオ上映
- ベビーコーナーの設置
- 栄養相談
- 無菌調剤……
Mメディカルは、これらのコンセプトを次々に実践してきました。
地域住民とのコミュニケーションを図りながら、高度な調剤業務にも積極的な取り組みを見せるR薬局は、従来の門前薬局とは違うニュータイプの門前薬局と言えそうです。