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薬局にとって医薬品卸は無くてはならない存在です。

製薬メーカー以上に世話になっていると感じている薬剤師は非常に多い筈です。電話一本で薬を素早く届けてくれたり、薬局の在庫の軽減に親身になって相談にのってくれたりしてくれます。

ところが、そんな医薬品卸が2010年、医薬品卸業界全体の営業利益率が0.13%で過去最悪を更新してしまいました。2012年のころになると、利益率が少しは、上向きになったとか。

それでも医薬品卸にとってまだまだ、厳しい状況は脱していないようです。

そんなことはヒタ隠しにして笑顔で薬局に来てくれるMS(Marketing Specialist 医薬品卸販売担当者)の本音に迫ってみようと思います。

あるMSの一日

朝8時半、朝礼の後、製薬メーカーよる5~10分の研修があります。

一か月で約20~30のメーカーが行います。そのあと、他社のMRが挨拶にきます。そのMRたちと担当エリア情報を連携して販売戦略を考えます。

10時から病院を5軒、薬局を15軒回ります。その時、薬局や医療機関の情報を訪問先に提供。また、着任したばかりのMRを医師に紹介もします。

薬剤師に選ばれるための努力

医師に薬を売り込む時、度々、薬が変わると、周囲の薬局は符号在庫を抱えることになり、困るだろうと考えながら、営業します。

それは薬剤師から選ばれる卸になるためでもあります。「これからは在宅活動や一般医薬品の販売に力を入れる薬剤師のサポートをしていきたいとMSたちは考えています。

医薬品卸の経営難に薬局が深く関わっている理由

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医薬品卸は製薬メーカーから薬を仕入れて、それを薬局や病院に売って利益を得ています。

ところが今、薬局や病院に薬を売っても利益が出ないのです。その訳を厚生労働省の調査結果を基に説明します。

例えば、薬価が100円の薬剤Gで説明します。

製薬メーカーはGを医薬品卸に89.5円で売ったとします。この価格を仕切り価格と言い、基本的には全国同一価格と言われています。

医薬品卸はちょっと高いなと思いながらも、その値段で購入。薬局には少しばかり利益を上乗せして90円で売ることにします。医薬品卸にはG一錠あたり90―89.5=0.5のもうけを得ることが出来ます。そこで薬局側がもう少し安く売ってくれないかと言ってくれば、希望通りの価格で売ることができません。

薬局の値下げ希望に同意し、薬局に仕切り価格を下回る85.9円という値段で薬局に売ることになってしまいました。85.9―89.5=-3.6円、医薬品卸は損をすることになります。

妙な話ですが、売れば売れるほど、医薬品卸は利益減になっていくのです。

医薬品卸側の主張

このように卸値と仕切り価格の差がマイナスになることを「一次売差マイナス」と言います。

2001年までは一次売差プラスでしたが、2002年にはついに売差がゼロになり、その先はマイナスが通常となっています。

医薬品卸は、一次売差マイナスになってしまった原因を薬局や病院が低すぎる卸値を要求するためと主張しています。

つまり、薬局や病院が利用する総価取引と未妥結・仮納入が原因と言うことです。

前者の総価取引とは、複数の医薬品を一つの箱に入れて,その箱をいくらか値引きして購入するというやり方です。薬局や病院にとっては比較的安価な値段で購入できるメリットがあります。

後者の未妥結・仮納入とは、価格がまだ決まらないうちに薬だけを仮納入させてもらうことです。

この業界は価格交渉の期間が相当長く、半年、一年以上と続くこともよくあります。

 

※価格交渉が長引く原因

薬局や病院側がよその交渉状況を見やりながら、他よりもさらに価格を下げようとするため、なかなか価格が決まらないようです。

この前者と後者のような取引方法は、取引額の大きいチェーン薬局や病院に多く、長い間、医薬品卸は、苦しい道を歩んできたというわけです。

 

総価取引の改善を政府側が求める

1970年代の頃の総価取引は、病院が行っていました。

この取引が、医薬品卸にとって致命的な問題になったのは、1990年代の初めの頃です。医薬分業によって大きなチェーン薬局ができはじめ、価格交渉が激しくなったことが原因の一つのようです。

医薬品卸側は、総価取引の中止を求めてきましたが、薬局や病院にとって価格の引き下げは、経営安泰に結び付くことでもあり、有益なこの取引を手放すことはなかなかできませんでした。

ところが、2007年、このような状況を政府が「けしからん」と口を出してきました。中央社会保険医療協議会(中医協)が、総価取引や未妥結・仮納入の改善をするように医療業界に求めてきました。

その理由はこの二つが薬価制度を乱すということだからです。

薬価は世間の評価を反映している

薬価は2年に一度、改定されます。薬の「市場価格」を検討して決められています。

厚生労働省は時に、薬価調査を行います。薬の卸値を調べて、次の薬価改正に役立てます。卸値が下がらない薬の薬価はそんなに下がりませんが、卸値が下がる薬は薬価も並行してさがります。

薬価は政府が決める公定価格ですが、世間の評価を検討した上で決定しているのです。最近、導入された「新薬創出加算」は高い価格の新薬に、市場の価値に相応した価格がつくようにした制度です

しかし、これらの薬価調査には多少、問題点があります。まだ、卸値が決められていない取引の場合は、薬価改定に反映できないのです。

先述したように、「未妥結・仮納入」で安く取引され薬の価格については、価格交渉が長引き、薬価調査が行われる頃に価格が確定されていなかった場合、薬価調査に反映させることはできません。相対的に薬価が維持されてしまいます。

また、日本の薬価制度は銘柄別収載で、薬の価値、価格を薬毎に評価していきます。

最近の医療政策は、薬の価値に見合った個々のレベルにあった薬価をつけていくべきという考えのもとで価格が設定されている傾向が強いです。

そのような傾向の中で価値のある薬も無い薬も一つの箱に入れ、同じ値引き率で売りさばこうとする総価取引は、そこの薬が持つ価値を隠してしまうことになります。