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田舎の薬局は本当にのんびりしています。周りに大型DSがあって売上が下がっても、都会の薬局のようにあまり騒がないです。

たった一人で薬剤師兼事務員兼掃除のおばさんをやっていますので、経費はホント、かかりませんから。

これから、20年の間に、私の小さな薬局で起きた三大ニュースを紹介します。

私が個人薬局をやってもう、20年。それまでは某国立大学病院の薬局で働いていました。

何故、大学病院から個人薬局へと華麗なる?変身を遂げたのかと言いますと、84歳でありながら果敢に薬局を経営されていた老薬剤師の「薬局は左団扇で楽ちん」という甘い言葉でした。

いまでも、病院薬剤師から薬局薬剤師になってよかったかどうかははっきりしません。

でも、病院薬剤師のままでは経験できなかったことはたくさんありました。

①「こんなお店、燃やしてやる」事件

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シアナマイドという嫌酒薬があります。アルコール依存症の患者さんに処方される薬です。

医師は飲酒習慣を改善させる目的でこの薬を飲ませます。この薬を飲んでいる時に飲酒すると、たちまち、二日酔いの症状が出てしまいます。

シアナマイドは二日酔いの原因になるアセトアルデヒトが酢酸になるのを阻害する作用を持っています。従って、シアナマイドを飲んだ後にうっかり、飲酒してしまうと、二日酔いの症状がたちまち起きてしまいます。

このような現象を利用して、医師はアルコール依存者にシアナマイドを飲ませ、お酒を嫌い?にさせようとするのですが……。

 

冒頭の「こんなお店燃やしてやる」は、シアナマイドを飲んだり、飲まなかったりするちょっと不真面目な患者さんの言葉です。

禁酒を言い渡されている患者さんですが、禁酒を破ることも考えて医師は、軽い睡眠導入剤を一つだけ処方していました。そのせいで、この患者さんは眠れないのでしょう。

「あんたのその部屋(調剤室のこと)に、いーっぱい睡眠薬があるんだろ、10錠を一万円で買うから売ってくれんか?」

と、話しかけてきました。

患者さんの口からアルコール臭が漏れています。気分は悪くなさそうです。ということはシアナマイドを飲んでない?

「シロップのシアナマイドを今日は、飲んでいないのですか?」

「あれ?あれは、毒でしょうが?薬剤師のあんたが、何で俺に毒を飲ませるわけ?俺はあんたにいけんことした?」

たしかに飲酒歴のある患者さんにとってシアナマイドは、毒物になるかもしれません。

シアナマイドを飲んだ上に、浴びるように飲酒したのでは、アセトアルデヒドが体内に充満して、吐き気はする、頭痛はガンガンで毒を盛られたと感じてもおかしくありません。

「じゃあ、10錠を10万円で売って!」

「だめです。100万円でも一億円でも出せません!」

「あー、そうか、それなら、こんな店、燃やしたる!」

「どうぞ、どうぞ燃やして」

あれから10年経ちますが、私の薬局はまだ燃えていません。

患者さんは後、肝硬変を患われ、アルコール依存症の平均寿命はよく52歳と言われますが、54歳で亡くなられました。

②あ、あのオウム真理教の幹部が?

オウム真理教がまだ有名になる前の頃。ある製薬会社の営業マン(当時はMS、MRという言葉はなかったと思います)が来ていました。

やがて、担当が変わりました。

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数年後、オウムン真理教周辺が騒がしくなって、頻繁にマスコミ、テレビに出ていた頃、担当者がFという週刊誌を持ってきました。

その中の白い布をまとった男性の写真を指差して「覚えてますか?」と。写真の上には、オウム真理教の幹部と書かれてあり、元営業マンが麻原犯罪者の横に坐っていました。

すぐには分からなかったけど、徐々に見覚えある顔が浮き出されてきました。

そういえば、「お客様の帰られる背中に向かって、お客様の先祖に対して手を合わせるといいです」などと色々、不可解なこと話していたなと思いだしました。

三大ニュースには入れたくないけれども、将来のあのオウム真理教の幹部と月一で話していたかと思うと、やはり、何年過ぎても忘れられない出来事です。

③薬局に警察から突然の電話が……

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警察から、突然、電話がありました。まあ、警察という所は大体、突然ではありますが……。

「■■さんが亡くなられました。そのことでちょっと、お聞きしたいことがあるのですが」

■■さんとはその二日前、薬局の中で話をしています。

86歳という高齢で、胃がんが肝臓に転移しているとは思えないほど、お元気で家事もしっかりやっておられました。

90歳のご主人もお元気で、ご主人の運転で通院しておられました。

薬局では抗癌剤がよく効いて、腫瘍の大きさが小さくなっていて医師と喜んだと、話しをしてくれました。ただ、体が何となくしんどいと……。

警察の話では部屋の中で椅子に座ったまま、亡くなっておられたという事でした。

部屋の中に私の薬局の名前が書かれてある薬袋があったということから、電話をしたと警察の方が言われました。

まさか、調剤ミス?と頭に過りましたが、警察の方に薬袋に入っているPIP包装の薬に書かれた名前を読み上げてもらい、ミスはなかったことを確認いたしました。

「ご主人はどうされてますか?」と聞くと、「元気でおられます」と返事がその時はありました。

そして、その翌日にはもう、ご主人も亡くなられていました。自殺だそうです。

とても仲のいいご夫婦でした。子供がおられなかったからか、奥様の急死でこれから一人で生きていくのが辛くなられたのでしょうね。

お二人のお葬式が終わり、火葬された後、親族の女性がお骨の入った二つの木箱を両脇に抱えておられたのが、とても印象に残っています。