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薬剤師は医療用医薬品には調剤の関係もあってとても関心をもっていますが、市販医薬品に対してはどうしても軽視しがちです。

しかし、ドラッグストア、薬局で市販医薬品を購入する消費者は病気予備軍とも言えます。

早めに手を打たなければ、本当に病気になる可能性があります。国の医療費削減のためにも、病気を未然に防ぎ、受診率を減らすのは、薬剤師の腕の見せ所です。

また、薬剤師の専門的見解で消費者を早めに受診させることも薬剤師としての大事な職務です。

ドラッグストア、薬局に来た消費者たちを正しく導くために、薬剤師ができることはどんなことがあるのでしょうか?

疲れに効くドリンクはないですか?

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このように薬剤師に対して声をかけてくるお客さんは多いですよね。

「これから仕事に行くので何か元気が出る薬はないですか?」とか。

求められるままに、TVCMに出てくるような説明もあまりいらないような有名商品を販売するのは簡単なことです。

しかし、それでは薬剤師という肩書を有効に活用できていません。

疲れ、だるさと一言では言えても、この症状の範囲はとてつもなく広いです。

お客さんの疲れ、だるさの向こうにある見え隠れする病気にまで追及してみましょう。

生理的疲労と病的疲労

医師の処方を必要としない薬、つまり市販医薬品が対応できるのは、勿論、生理的疲労のほうです。

薬剤師としての専門的見解からみて、病的疲労と思える場合は、迷わずに受診を勧めなければいけません。

まず、生理的疲労なのか、病的疲労なのかを区別しなければいけない時は、どのような質問が適切でしょうか?

急いでいるお客さん、時間に余裕のあるお客さんで若干、質問の仕方が変わってきます。

簡単な質問(急いでるお客さんのために)

体の状態

①市販の薬で大丈夫ですか?(緊急性があるかどうかの判断)

②なにが原因だと思われますか?(お客さんに考えてもらう)

過去の服薬歴

①以前、同じような症状の時はどんな薬を?

その薬の効果はいかがでしたか?(お客さんの気に入っている薬を素早く聞き出す)

アレルギー・副作用歴

薬のアレルギーや副作用の経験があれば、教えてください。

(副作用等があった場合、その副作用の頻度、重症度から、薬の選択、受診の勧めの判断に)

併用歴

病院にかかっているのであれば、飲んでいる薬はありますか?(併用薬のチェック)

年齢

お歳を教えてください。特に、子供と高齢者(年齢による適切な薬を選択するため)

妊婦、授乳婦に対して

いつが出産予定日ですか?

授乳中ですか?(母体、胎児の保護、母乳と乳児の保護)

超簡単な質問

原因予測

だるさの原因は何だと思いますか?

現在の状況を簡単に

現在、治療中の病気、薬の副作用、アレルギーなどで言っておきたいことがおありですか?

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急いでいるお客さんに長々と話をするのは禁物。できるだけ、早く終らせてあげることは大事ですが、逆に何も質問もしないのも、薬剤師としては失格と言えま す。

忙しそうにされていても、何か、一言、二言、気遣いの言葉を発しましょう。その時はうるさがられてもお客さんの心には届いているはずと思って……。

お急ぎでないお客さんに対しては、上記の質問事項にさらに「だるさに伴う随伴症状」「生活習慣」「嗜好品」などの質問ができると、薬剤師歯より判断しやすくなります。

できることなら、サプリメントを摂っているか、いないかということも尋ねるといいでしょう。

サプリメントは医薬品ではありませんが。中には副作用、有害反応が出るものがあります。

疲労の原因

生理的疲労

過労、頭脳労働、スポーツ、生活環境、加齢などが原因で。休息、睡眠、栄養を十分にとることで、回復が見込めるような疲労のことです。

市販医薬品や医薬部外品となるのが、この疲労です。

病的疲労

病的疲労を疑われたら、即刻、受診を勧めなければいけません。病的疲労は、器質的疾患や精神疾患が原因の疲労です。

前者は、糖尿病、各種の感染症、甲状腺機能亢進症、肝機能障害、悪性腫瘍などです。昼から夕方にかけて疲労がたまっていくのが特徴です。

後者は、心身症、うつ病、統合失調症、薬物依存(アルコール依存)で、疲労が徐々に始まり、慢性的に疲労が続きます。

器質的疾患とは違い、朝、だるさが強く、夕方以降は回復する傾向があります。また、ストレスの有無でだるさ、疲労の感じ方が変わってきます。

疲労の原因が、生理的、病的、両方にある場合、生理的疲労であったのが、いつまでたっても疲労が取れないというような場合も受診を勧めましょう。

疲れたと感じるメカニズム

①エネルギー源の不足

筋肉を動かすには当然、エネルギーが必要です。

筋肉の供給源はグリコーゲン。

そのグリコーゲンの減少やエネルギー源となる物質の供給が不足していると、疲労感が強く出てしまいます。

②代謝産物「乳酸」の蓄積

以前までは、乳酸が疲労物質の代表選手のような言い方をされていましたが、最近、わかったことですが、乳酸は疲労物質ではなく、運動前も運動後も乳酸は存在すると言われるようになりました。

このあたり、まだ決定てきなものはなく、しばらくの研究発表の様子見が必要かと考えられます。

③内部環境の崩れ

人間には体の内部環境を一定に保つホメオスタシスというシステムがあります。

しかし、そのホメオスタシスも外からの肉体的、精神的刺激が加わることで、ストレスが生まれ、破壊されることがありますが、これを疲労というようです。

ここでいう外からの刺激とは、極寒、猛暑、不安、睡眠不足などです。

市販医薬品の選択

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「疲れ」で来られたお客さんに対して、大体、内服薬(ドリンク剤含む)を勧めることが多いようですが、医薬部外品などを組み合わせることでより効果的に疲れをとることができます

例えば、医薬部外品の冷却シートなどで額を冷やすと、寝苦しさが解消され、結果的に疲労が解消されることになります。

医薬品ばかりでなく、医薬部外品なども有効に活用して、疲れ、だるさ解消に適したアドバイスをお勧めします。

また、疲れが精神的ストレスからくるものであれば、話をきくだけでお客さんの疲れなどが解消することもあります。

この他にも、どのような疲れにどんな成分が配合された製品を勧めたらいいか、目安になるものがあります。

目の疲れ、肩こりが辛いというお客さん

パソコン、スマホなど、瞬きもせずじっと見ているという動作がたいへん増えてきました。

そ のようなお客さんには、ビタミンB₁、B₂、B₆、B₁₂にγ-オリザノールが配合された内服ビタミン剤、ドリンク剤、目薬などを勧めてみましょう。

そこ に血行障害、ストレスなどが認められるようであれば、自律神経症状の改善効果があるニンジン、ローヤルゼリー、ビタミンEなどが配合された製品が適してい ます。

風邪などの感染症で体力消耗、だるさに

感染症で発熱が見られた時、かなりの体力消耗があります。

ビタミンB群、ビタミンC、生姜、桂皮などの生薬が効果的です。そこにタウリンなどのアミノ酸が配合されると体力消耗の度合いを軽減してくれます。

ま た、体力消耗を避けるために睡眠を十分とらなくてはいけません。そのため、栄養剤であって、カフェインが配合されていないものを勧めましょう。

それに、市 販用の総合感冒剤には大体、カフェインが入っています。

そのためにも栄養剤ではカフェインを抜いたものを選んであげなければいけません。

激しい運動や仕事でひどく疲れた時に

ニンジン、ハンピ、ムイラプアマといった強壮生薬の成分と、筋肉疲労、精神疲労どちらもOKなビタミンB群が入った製品が役に立ちます。

だるい、しんどいを連発する女性

内臓や器官は異常がないのに、色んな障害、症状が出ることを不定愁訴と言います。

内臓等に異常がみられないため、精神的なものとして片づけられてしまうことが多いです。

本人は疲れ、だるさを自覚しているので、そのまま放置していてはいけません。このような疲労、倦怠感

を 示す人には滋養強壮のドリンク剤やビタミン剤でもいいのですが、女性用保健薬も効果的です。

女性用保健薬は、女性の体に現れる特有症状の緩和とそれらの予 防を目的とする内服薬と位置づけられています。

従って、トウキ、センキュウなどの生薬成分にビタミンB群、C、Eが配合されている製品がお勧めです。

お客さんに勧める時の注意事項

ドリンク剤には微量のアルコールや糖質が配合されています。

服用した後に高血糖など思わぬ症状に見舞われることもあるので、以下に注意事項をお教えいたします。

糖分

ドリンク剤ですが、ブドウ糖、ショ糖、果糖などが含まれているため、糖尿病、血糖をコントロールしてカロリー制限を実施している人には、要注意です。

微量のアルコール

生 薬成分の抽出や有効成分をしっかり溶かすために、ドリンク剤に微量のアルコールを入れることがあります、その場合、「エチルアルコール0.2ml以下」な どと表示されています。

一回の服用量の中のエチルアルコールが0.1ml以下であれば、表示しなくてもいいと定められています。

しかし、微量とはいえ、視覚機能に影響を与え、瞬間的に目が見えなくなるという症状が報告されています。

また、ドリンク剤によっては、2本、全て飲めば、コップ一杯のビールに相当するアルコール濃度のものがあり、自動車の運転や危険な作業をする人には注意をしましょう。

それ以外の添加物

特定の物質に対してアレルギーを持っている人には添加物とはいえ、配慮が必要です。

安息香酸、パラベン、プロピレングリコールなど瓶のラベルに表示されているので、成分を確認してお客さんに問い質してみましょう。

指導のポイント

繰り返しますが、疲れがひどい、だるいと訴えてきたお客さんまず、確認することは、生理的疲労と病理的疲労の区別です。

生理的疲労と推測し、市販用医薬品を勧めた場合でも、「これを○日飲んでも効果がなければ、病院に行ってくださいね」と勧告する必要があります。

また、薬に頼り過ぎる傾向があるのも問題です。下記のような生活指導を行い、疲労の原因と考えられる生活スタイルや、環境の改善を促しましょう。

 

生活指導

  • 十分な睡眠
  • 適度な飲酒
  • 負担の少ない軽い運動を毎日
  • バランスの取れた食事を規則正しく食べる
  • ぬるめのお湯でゆったりと半身浴。

栄養剤を過剰に服用への警告

近 年は飽食の時代。以前の栄養不足が生じてた頃とは違います。

例えば、疲れからビタミン剤を飲むということになった場合、すでに別の医薬品やサプリメントな どを服用している場合があります。

つまり、過剰摂取による健康被害も視野にいれなければいけません。

ビタミン剤などの上限は決められているので、できるだ け併用薬の有無をお客さんから聞き出し、過剰であれば、即刻、改めて、アドバイスしましょう。

過剰飲用の注意すべきポイント

主に脂溶性ビタミンに過剰摂取の副作用が見られます。

※脂溶性ビタミン

  • ビタミンA;過剰摂取は頭痛、食欲不振、脱毛、掻痒感などを引き起こします。妊娠初期の女性には要注意。催奇形性が発生したという報告があります。
  • ビタミンD; 消化器系の不快症状が出ます。また、イライラ感がひどくなると、不眠傾向に。動悸、胸痛など循環器系にも変化をきたします。
  • ビタミンE;脂溶性ビタミンでありながら、過剰症はないと言われていましたが、過剰で長期連用となれば、やはり、有害な症状は出やすくなります。例えば、胃部不快感、下痢、便秘、過敏症として発疹。大量の長期連用で血栓静脈炎に罹患しやすいという報告があります。

※水溶性ビタミン

  • ビタミンB₁;過敏症として発疹が出る人がいます。
  • ビタミンB₂;酪酸リボフラボンで食欲不振、悪心などの消化器不快症状が出ます。又
  • 尿が黄色になることがあります。
  • ビタミンB₆;知覚異常など、末梢神経障害が出ることがあります。
  • ビタミンB₁₂;一過性の湿疹、痒みが出ることがあります。
  • ビタミンC;嘔吐、下痢、
  • ニコチン、ニコチン酸アミド;過敏症として発疹、口唇腫脹。また、口渇、嘔吐腹痛などやはり消化器系不快症状が出ることがあります。

※生薬

  • ニンジン;長期連用で、不眠、頭痛、血圧上昇があります。抗利尿作用があるので、むくみがある人には要注意が必要です。

※その他

  • カフェイン;中枢神経興奮作用があるのは有名です。睡眠、休養が必要な人は避けましょう。