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服薬指導の現場で患者さんは様々な不安を口にします。

「薬の副作用が出ないかしら?」

「きちんと飲んでいるのになかなか、症状がとよくならない?」

「仕事が変わり、収入が減った。薬代が払えるかな?」

このような患者さんの不安に出会った時、薬局で働く薬剤師はどのように対処しているのでしょうか?

患者さんの不安のケアに薬剤師は同取り組んでいるのか、事例を紹介します。

服薬に関する患者さんの不安はどんなもの?

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患者さんの不安にどこまで気付くことができるかは、服薬指導の薬剤師の腕に罹っています。

 

○薬を飲むという行為自体に不安を感じる

薬剤師は服薬は当たり前と考えているので、患者さんが薬を飲むこと、そのものに抵抗を感じているとはなかなか、気付きません。

しかし、薬局に初めて来た時は病気になったばかりで、そのことを患者さん自身が受け入れられていない状況で薬を出されることが多く、それが原因で不安が強くなるようです。

特に吸入剤やインスリン注射薬など、経口剤以外の薬が処方された時は、特に注意が必要です。

 

薬剤そのものの不安に加えて、「ちゃんと使えるだろうか」という不安が上乗せされます。

従って、表面的には落ち着いているように見えても、実は心穏やかではないこともあるはずです。

薬の説明をしてもどこか上の空、何か手ごたえが感じられないといった感触があれば、「このようなお薬は初めてご覧になりますか? このようなお薬が出された時、不安になられる患者さんは多いんですよ」と、まずは患者さんの不安を受け入れる言葉をかけてみましょう。

そして、副作用。患者さんが一番、気にかかる部分です。飲むと、どんなふうに体調が悪くなるのか? アレルギー体質だけど飲んでも大丈夫なのか? など、患者さん自身が頭の中でグルグル考えています。

副作用が怖いとはっきりと口にする患者さんには、「どうして怖いと感じるのか」を聞き出し、その内容に合わせた説明をしていきます。

その他、薬が追加、変更になった時は、処方箋内容と医師の患者さんへの説明に食い違いが無いか、確認が必要です。

患者さんは医師の説明と違う薬が出ていると、大きな不安を感じます。時に、医師が誤って別の薬を処方していることもあるので、患者さんとの話がかみ合わないと感じた場合、疑義照会も含め、薬剤師自身も納得できるまできちんと対応しなくてはいけません。

なかなか治らない病気への不安

「マジメに薬を飲んでいるのに、病気がなかなか治らない」

服薬指導でこんな悩みを抱えた患者さんによく出会います。その中でも長期に渡って薬を飲み続けなくてはいけない慢性疾患を抱えた患者さんは、特にそうです。その不安が強くなると、自分がかかっている医療機関の不満へと不安が、さらに増強されてしまうこともしばしばあります。

注意したいのは、病気が治らない不安を症状として訴えてくる場合がある時です。

例えば、末期がんで治らない不安が続くと、その思いを体の痛みとして訴えてくるのです。このような場合は、痛みが特に強い時に使用する「レスキュードーズ」の使用状況などから痛みの緩和が十分でないためか、病気に対する不安からなのかを、見極める必要があります。

薬代の支払いなど、生活に対する不安

「病気のため、今までのように働けなくなった」

「収入が減り、薬代を払うと、生活が困難になる」

生活面の不安は色々ありますが、特に不安が強くなるのは経済面です。病院には行っても、薬局には来ない、病気の治療を中断するということもあります。治療の中断は、まさに深刻な問題です。

ある薬局の話ですが、3か月以上来局していない慢性疾患患者に電話して聞いてみると、1割が経済的な理由で治療を中断していたことがわかったそうです。

また、中断に至らないまでも、通院回数を減らす患者さんもいます。この薬局で薬局の窓口負担で5000円超える患者さんを対象に調査してみたところ、医療費を捻出する工夫をしているという患者さんの60%が生活を切り詰めている、12%が通院回数を減らしている、10%が薬の間隔を空けて服用している、という結果が出ました。

また、薬を変更してほしいという患者さんの4割強が安い薬に変えて欲しいというものでした。

経済的な問題のため、薬をきちんと飲もうとしない患者さんに「薬はきちんと飲みましょうと言ったところでコンプライアンスが向上するわけありません。

そこで、患者さんの暮らしぶりを知り、必要に応じて国民健康保険の支払免除や生活保護など、各種の社会扶助制度を紹介することも患者さんの不安解消のために、薬局ができることの1つです。

患者さんを看病、介護する家族の不安

不安なのは患者さんだけではありません。その家族もまた、不安でいっぱいです。

特に患者さんに薬を飲ませている家族の不安も薬剤師がケアして解消していかなくてはいけません。

特に病気の子どもを持つ母親。初めての子どもの場合、高熱、嘔吐など母親にとっては全てが初めての経験なので強い不安を抱えています。

それでも子供の母親の場合は、薬の安全性、効果が出るまでの時間など、不安の内容が予測つきやすく、きちん説明すれば、理解してもらえます。

また、大体、母親は積極的に質問をしてくる場合が多く、母親の不安になる正体がわかりやすいため、薬剤師のほうもケアがやりやすいですね。

問題は、高齢者患者さんの家族。

患者さんが高齢者であれば、その家族も高齢者であることが当然、多いです。そのため、質問の内容がわかりにくかったり、遠慮して質問を控えたりということがよくあります。

薬剤師の説明も若い人ほどすぐには理解できない場合もあります。抱いている不安の幅も若い人に比べて広いのも特徴です。

患者さんが服用している薬や病状のことだけでなく、生活の苦しさ、家庭環境のトラブルなど、様々な不安が薬剤師に語られているはずです。これらの不安を全て薬剤師が解決できるはずはなく、ケアマネージャーなどに情報提供を行い、医療チームとして患者さんやその家族の不安解消に力を注ぐべきです。

また、薬の説明や医師に対する薬変更の提案、服薬介助を行うヘルパーへの指示など、薬剤師にできることはその場で対応していき、患者さん、その家族が不安に感じる時間を少しでも短縮できるように心がけます。

薬剤師の態度、服薬指導が原因で不安に

薬剤師の服薬指導が原因で不安になってしまったという残念なこともあるようです。

無駄な言葉は、出来るだけ言わないように注意している薬剤師がほとんどでしょうが、服薬指導時の言動よりも調剤する時の薬剤師の態度に不安を感じる患者さんが多いと言われています。

一番、患者さんが不安になる時は、薬剤師が慌てる時です。「薬の在庫がない」「処方に不明点があり、疑義照会しなければ」などと、調剤室で薬剤師が慌てている姿が見えると、「私の薬にどこかおかしなところがある?」と、患者さんの不安は増長していきます。

また、調剤室で薬剤師が他の薬剤師に調剤のことで相談していると、患者さん側から見れば、雑談しているように見え、不快感を抱かれてしまうことも。

薬剤師は患者さんに無用な不安を抱かせないためにも、いつも見られているという意識を持つことが重要です。

物言わぬ患者さんから不安を拾い上げるために

「私はとても不安なんです」と自分のほうから打ち明けてくる患者さんは、むしろ少数です。

患者さんの奥に潜んでいる不安を拾い上げるために、現場では色んな取組みがされています。

薬剤師からの能動的な情報提供を

薬を飲むことに不安があるのなら遠慮なく言ってほしいのに……と、薬剤師は物言わぬ患者さんに思います。

患者さんから相談してもらえないということは、薬剤師が薬についての相談相手と認識されていないということになります。

この相談相手として認識してもらうための方法が「薬剤師からの能動的な情報提供」です。

薬やサプリメントなどに関する健康情報を集めた患者さん向けに作成したチラシを服薬指導の時に渡している薬局さんは多いと思います。

ある薬局は、そのチラシに患者さんからの質問とその答えを書くコーナーを作りました。

なぜなら、チラシに寄せられた質問と同じように疑問や不安を感じても、薬剤師に直接、尋ねてくる患者さんはほんのごく一部だからです。

患者さんが日頃、感じている疑問と答えをそのチラシに掲載すれば、不安を感じていたけど、質問ができなかった人の不安を解消することができます。また、薬に関する不安や疑問は、この薬局の薬剤師に聞けばいいという意識が出来上がってきます。

この薬局が作るチラシのテーマはさまざまですが、テレビ番組で紹介された健康情報の真偽を扱った時は反響が大きかったようです。

「グレープフルーツジュースとワーファリン一緒に飲んで死亡した人がいるかどうかという健康クイズとテレビでやっていたが、正解かどうか見逃してしまった、ほんと?嘘?」という電話が、放映した後、かかってきました。薬剤師は「この組み合わせで危険な相互作用を招いたという報告はないと言う返事はしたものの、同じような不安を抱いている患者さんは他にもいるはずと思い、グレープフルーツジュースと相互作用を起こす薬剤のリストをチラシの中で紹介しました。

チラシの最後に「他にも飲み合わせに不安を感じることがあったら、薬剤師に聞いてください」と書いておきました。

それ以後、チラシを読んだ患者さんから質問が相次いであったようです。

薬剤師の仕事の内容を知らせて、薬に関する質問をしやすくする

患者さんが市販薬を買う時、複数の薬品の中から、薬剤師に相談して購入する薬品を決めます。

一方、処方箋の場合、医師が出した処方箋通りの薬を患者さんに渡すだけです。調剤中心の薬局は、薬剤師が薬の相談相手として認識しづらいかもしれません。

特に高齢者の場合は、「すべて医師にお任せする」と考えていることがほとんどです。

処方内容に疑問を感じていても、薬局ではなかなか相談をしようとしません。そこで、高齢者に向けて「薬剤師のお仕事」というパンフレットを作り、一人一人、手渡しました。

それからは、薬剤師は気兼ねなく、薬や健康のことを相談できる相手ということで気軽に相談をしてくる患者さんが多くなりました。

薬剤師では解決できない相談

このような場合は、解決策につながる人脈が大いに役に立ちます。相談してもらうには、この人ならと思ってもらうことが大切です。

また、薬剤師一人では解決できなくても、解決策を持つ人脈があれば、さらに相談できる頼もしい薬剤師となります。

すでに相談薬局として地域住民から信頼を寄せられている薬剤師は、下記のようにアドバイスします。

「地域の保健師と知り合いになりこと」

保健師が行う訪問保険指導では、療養の指導だけでなく、各種の社会扶助制度の活用法も教えています。

1人暮らしの高齢者や在宅で療養している人の生活上の不安への対応においては大変、役に立ちます。

そのような地域の保健師と面識があれば、患者さんから生活上の不安を相談された時、「保健師の△△さんなら力になってくださると思います。お電話してみましょうか?」と、切り出すこともできます。

「保健センターに相談されてみてはいかがですか?」と単に対応するよりは、患者さんに有難く思ってもらえるはずです。

その他、市役所の福祉担当職員や患者会の主催者などとも面識があると、患者さんの相談にのれる範囲も広がります。

不安に焦点を当てた服薬指導は3ステップで

患者さんの不安を少しでも軽くしようと、一生けん命話すのですが、途中から聞き流されてしまった、こんな経験はありませんか?

このような失敗を繰り返さないためには「ヘルスカウンセリング」という技法で不安を3ステップで解決する方法があります。

まずは不安がないかを尋ね、患者さんが不安を認めた後、不安の原因を特定するというものです。

まず、このステップを踏んでいく時、薬剤師自身が薬剤に対して患者さんが不安を抱くのは当然だという認識を持たなくてはいけません。

この点をしっかり押さえていなければ、患者さんをいたずらに刺激してさらに不安にさせて7しまうので、要注意です。

■ステップ1 不安を尋ねる

服薬指導を一通り終えた後、患者さんが納得できなかったような表情が感じられたり、何か言いたそうな口元だったりした時、何らかの不安を抱いていないかを直接訪ねてみます。

「何かご心配なことがありますか?」

ステップ2 不安を認める

患者さんが話す内容に、たとえ薬剤師が納得いかない場合でも、頭ごなしに否定せず、患者さんが話し終わるまで、傾聴します。

患者さんが、不安を抱いていることを理解しているということを言葉や態度で示します。

「さぞ、御心配だったことでしょう」

ステップ3 不安を特定する

薬局で患者さんが話す不安の大半は、漠然としたものです。

そのため、会話を通して不安の原因を絞り込みます。そうすることで解決策も講じやすくなります。

どうしてそのことを不安に感じるようになったのかなど、理由を尋ねる質問も有効です。

「どんなところに不安を感じますか?」